西南学院大55年ぶりVの原動力 竹下コーチの武器は過去の失敗

[ 2015年9月4日 09:15 ]

現役時代の竹下慎太郎氏

 見覚えのある顔が、ベンチに座っていた。福岡の西南学院大は、今春の九州六大学リーグで、実に55年ぶりの優勝を飾った。その原動力となったのが、今年から投手コーチに就任した元横浜(現DeNA)の中継ぎ左腕・竹下慎太郎。ベンチでは捕手に1球1球サインを出していた。

 「西南は頭がいい学校なので、高校時代、野球ばっかりやってたという子はいないんです。本格的に教わったことのない子も多い。そんな選手を教えて伸びていくのを見るのは、本当に楽しいですね」

 今から15年前の00年ドラフト。横浜から8位指名を受けてプロ入りした。当時、29歳4カ月。すでに妻子もいた。82年に30歳4カ月で中日に3位指名された市村(電電関東)に続く、史上2番目の高齢指名での入団だった。

 プロでは1年目から中継ぎで重用された。01年が53試合、02年も44試合。中でも当時の森祇晶監督が「左対左」を好んだため、巨人戦では松井とよく対戦したが、2年間で通算15打数7安打の打率・467、5本塁打と打ち込まれた。「だってメジャーで4番を打つようなバッターですよ。左だからといって、そんな簡単じゃないですよ」と笑いながら当時を振り返る。

 だが、この時の経験が今、生きている。「失敗は財産。せっかくの経験をみんなに伝えたいんですよね。選手も失敗談の方が食いつきがいいですし」。元プロとして成功体験を振りかざすのではなく、失敗談を織り交ぜながら「こうすると失敗のリスクが減るよ」というアプローチ。指導者・竹下の1番の武器は、若者気質を理解しながら目線を下げることができるところかもしれない。

 現在は福岡市早良区で整骨院「ウインズ」を経営している。大学のコーチはあくまでもボランティア。だが、酒を飲んでいても相手のジョッキの持ち方を見て、4スタンス理論からタイプを分類してみせるなど、常に指導者としての眼力は磨いている。

 最近は独立リーグからNPBのコーチに転身するケースも多い。このまま投手コーチとしての力量が認められれば、ひょっとしてアマの指導者からNPBのコーチへの転身も――。30歳目前でプロ入りし、諦めなければ夢はかなうことを体現した竹下なら、また異例の形でプロの世界に戻ることも、決して不可能ではない気がする。(白鳥健太郎)

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2015年9月4日のニュース