偉大な父の教えを胸に…裏方として日本ハム支える野茂貴裕通訳

[ 2015年8月16日 08:15 ]

外国人選手と談笑する日本ハム・野茂貴裕通訳

 野球界ではこの名前を知らない人はいないはず。「野茂英雄」。メジャーへの道を切り開いたパイオニア。そんな偉大な人物を父に持つ23歳が日本ハムを支えている。今季から1軍担当の通訳を務める野茂貴裕氏だ。

 いつも笑顔で選手と接する目元は父に似ている。日本ハムは現在、5人の外国人選手を3人の通訳でサポートしている。「自分はまだまだですが、みんないいやつばかりだから」。苦労はないと言うが、練習中でも、移動中でも、宿舎でも携帯は鳴り続ける。

 「2世のプレッシャーはありましたね」。日本で生まれ育ち、小学校から高校までインターナショナルスクールに通った。小学校低学年で野球を始めたが、「野茂なのに下手じゃん」と言われたのがショックでチームには所属しなかった。それでも野球が好きだった。夏休みに訪問した「父親の勤務先」である米国でキャッチボールをした。「やっぱり楽しいな」。この気持ちが原点だ。小学5年生からチームに入り、大学まで野球を続けた。

 サンフランシスコの大学に留学し、スポーツマネジメントを学ぶうちに「この経験が生かせるかな」と通訳の仕事に関心を持った。普段はあまり話すことがないという父が「日本ハムで通訳の研修ができるけど行くか?」とこの道に導いてくれた。2世という立場に悩んだこともあるが、野球界に導いてくれた父には感謝している。

 野球選手の父を持つ野茂通訳だからこそ、できる気配りがある。父からは「研修に参加したときの初心を忘れるな。今までは選手の家族としてサポートしてもらっていたけど、今度は裏方として、サポートする側に立ってやりなさい」とアドバイスを受けた。「外国人選手が活躍できるように、選手の家族を気にかけています」。それでも今は試行錯誤の日々だ。

 「みんなでワーワーして和気あいあいとしている」。日本ハムの雰囲気は、少年時代に見たドジャースのロッカールームに似ていて、どこか居心地がいいという。スポットライトを浴び続けた父とは違うが、裏方としてチームを支えるルーキー通訳も輝いて見える。(中村 文香)

 ◆野茂 貴裕(のも・たかひろ)1992(平成4)2月24日、神奈川県生まれの23歳。小学校、中学、高校と都内のインターナショナルスクールに通い、学校の野球チームに所属。ポジションは一塁手。サンフランシスコ近郊の大学に留学しスポーツマネジメントを学ぶ。15年1月から日本ハムの通訳として1軍を担当。座右の銘は「猪突猛進」。

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