黒田独占手記 初広島球宴に感慨「日本に帰ってきて良かった」

[ 2015年7月19日 10:15 ]

<全セ・全パ>2回2死一、二塁、中島卓の中前に抜ける打球に思わず右手を出す黒田
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マツダオールスターゲーム2015第2戦 セ・リーグ8-3パ・リーグ

(7月18日 マツダ)
 8年ぶりに球宴出場した先発の広島・黒田博樹投手(40)が2回を3安打無失点と好投。本拠地では初めての球宴で、スポニチに独占手記を寄稿した。

 19年目のオールスターは最高でした。先発機会を与えてもらい、その舞台が広島。多くの声援がうれしく、真っ赤に染まる球場を見ると、こみ上げるものを感じました。送り出してくださったファンの方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

 全パは見ての通りの強力打線。オーダーを見た時は、どうやって斬ろうかと思いました。初回は結果的に3三振を奪いましたが、直球だけで抑えられる打者じゃない。インサイドを厳しくも突けず、いろんな球種を使わないと抑えられなかったことは正直悔しいです。

 でも、マウンドでは楽しめました。2回、併殺が欲しい1死満塁で炭谷君への1球はイメージ通り。中島君の打球に右手を出したのは体に染みついたクセですね。内容が良くない中で、ゼロに抑えられたのは良かったし、多少でも喜んでもらえたらうれしいです。

 昨年は僕にとって大きな転機でした。カープに帰るか、メジャーに残るか。2つの選択肢の中で悩みました。40歳を迎えるシーズン。振り返れば、入団後2~3年は苦しんだのに、この年齢まで野球ができ、メジャーにも挑戦できた。出来過ぎの野球人生です。

 そう考えると、心持ちが変わりました。プロ野球は強者が勝ち残っていく世界。メジャーはより顕著で、僕自身、投手としてのスキルアップだけを考えて投げてきた。ただ、年齢を重ねてくると、若いころには考えなかったことまで、考えるようになるものです。

 復帰を待ってくれた人たちに、喜んでもらえる一球を投げたい。おこがましいけれど、今は自分ではなく、応援してくれる方のためにプレーするという気持ち。この一球が最後になってもいい…という覚悟を常に持ちながら、一球一試合を大事に投げたいという思いも強くなりつつあります。

 カープに対しても同様です。以前在籍した当時と比べると若返り、野球に対して真剣な選手が多い。皆から勝ちたい気持ちを感じるし、刺激も受けます。僕は、チームに必要な戦力でいたいとは思いますが、どれだけ他の選手の力になれるか。帰ってきたことでチームのプラスになれば…という立ち位置です。

 無論、カープに帰って優勝したい気持ちはあります。ただ、結果を求められる立場であっても個人で何かを達成したい思いはなく今は日米通算200勝にも気持ちが向かない。ドジャースやヤンキースでさえ難しさを痛感したので、安易に優勝とは言いたくありませんが、投手としては投げる試合に勝つ。それが職責だと思います。

 広島で球宴の舞台に立ち、日本に帰ってきて良かった…と、あらためて感じます。1年前に起きた土砂災害の被災地から野球少年たちが訪れ観戦したと聞きました。僕がマウンドに上がることで彼らや被災者の方々が頑張ろうという気持ちになるのなら自分にとっても幸せなこと。野球の力は凄い。野球でそれなりに頑張ってきたからこそ喜んでもらえる。野球人生が終わった時に、よくやったなと思えるよう喜んでもらえる一球を大事に投げていきたいと思います。 (広島東洋カープ投手)

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