大谷「3回ぐらい心が折れそうに」壮絶投手戦制しダル超え10勝

[ 2015年7月11日 05:30 ]

<日・西>8回無失点の力投で10勝一番乗りを果たした大谷

パ・リーグ 日本ハム1-0西武

(7月10日 札幌D)
 心は折れなかった。日本ハムの大谷翔平投手(21)が10日、西武戦に先発し、8回3安打無失点で10勝目を挙げた。初めて投げ合った岸孝之投手(30)との息詰まる投手戦。7回まで無安打に抑えた相手エースに対し10奪三振の力投で投げ勝った。両リーグ10勝一番乗りは球団では11年のダルビッシュ(現レンジャーズ)以来4年ぶり。同じ高卒出身のダルビッシュが最初に両リーグ10勝一番乗りしたのは09年のプロ5年目で、3年目の大谷は2年上回った。

 偽らざる思い。大谷はお立ち台でこう言った。

 「3回くらい心が折れそうになった」。初めて投げ合い7回1死まで完全ペースだった相手エース岸との投手戦。我慢するしかなかった。「実力的には僕の負け」と振り返ったが、我慢し続けたからこそ勝利の女神が最後にほほ笑んだ。

 自らの守備で流れを呼び込んだ。0―0の8回無死一塁。秋山の投前へのバントを二塁で封殺した。好フィールディングに「最初は送らせようと決めていたけど、予想以上に打球が強かった。野手をやっていて良かった」と珍しく自画自賛。これぞ二刀流の本領発揮だった。直後の8回。味方が同じ犠打で好機を広げ、岡のスクイズで勝ち越しの1点を奪ったのも偶然ではない。8回3安打無失点で両リーグ10勝一番乗り。10三振を奪い、奪三振数でリーグトップに返り咲き、勝ち星、勝率、防御率と合わせて再び投手4冠になった。

 二刀流3年目。「投手・大谷」はさらに進化している。7回。6番の脇谷に投じた147キロ直球は右翼フェンス際まで運ばれたが右翼の岡が好捕。大谷は「危なかったけど、ギリギリのところで力配分していくのが昨年とは違う」と自己分析する。長い回を投げるため下位打線で力をセーブすることも必要だ。この日最速は157キロ。10キロ落とした「半速球」でもコースに投げ込むことで、打ち取るすべを身に付けようとしている。

 ダルビッシュが両リーグ10勝一番乗りしたのはプロ5年目。大谷は3年目で達成し、憧れの先輩を抜いた。そのダルビッシュを新人の05年から6年間指導し、大リーグに移籍した12年も専属トレーナーを務めた中垣征一郎トレーニングコーチは「2人は体格的には似ていても全然違う選手」と評した上で「筋力はダルの方が上だけど、バネは大谷の方が上」と分析。そのバネこそが最速162キロを生み出す。昨オフに田中(ヤンキース)とテレビ番組で対談したダルビッシュも大谷について「筋力、瞬発力が優位で、(動作に)伝えるのがうまいんじゃないですか」と称賛している。

 栗山監督も「こういう時はあらを探して、“すっとこどっこい”と言ってやりたいけど、言うところがないね」と称えた。今月5日に誕生日を迎え21歳初登板。大谷は「きょうの勝ちが今季の中で一番うれしい」と言った。首位・ソフトバンクに3・5ゲーム差。若きエースの活躍なくして首位追走はできない。(柳原 直之)

 ≪87年桑田以来≫大谷(日)が両リーグ最速の10勝目。日本ハム投手の両リーグ10勝一番乗りは11年ダルビッシュ以来8人目(9度目)。高卒3年目までの達成は00年五十嵐(ヤ)以来で、全て先発登板に限ると87年桑田(巨=高卒2年目)以来になる。また、1敗以下で一番乗りは13年田中(楽=0敗)以来。チームでは96年西崎と並び最少敗戦での達成となった。

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