浦学・江口 強気の延長11回完封!失明危機乗り越え前年王者斬り

[ 2015年3月24日 05:30 ]

<龍谷大平安・浦和学院>11回完封勝利にガッツポーズの浦和学院・江口

第87回センバツ高校野球第3日・1回戦 浦和学院2―0龍谷大平安

(3月23日 甲子園)
 1回戦3試合が行われた。第3試合では一昨年優勝校の浦和学院(埼玉)が昨年優勝校の龍谷大平安(京都)と対戦し、延長11回の末に2―0で下した。江口奨理(しょうり)投手(3年)が散発3安打で完封し、高橋奎二(けいじ)投手(3年)との投手戦を制した。第1試合の敦賀気比(福井)の平沼翔太投手(3年)、第2試合の仙台育英(宮城)の佐藤世那(せな)投手(3年)も完封勝利。センバツでは06年の開幕日以来、9年ぶりに一日全3試合が完封試合となった。

 最後まで強気に攻めた。2点先制した直後の延長11回無死一塁。江口は内角直球で3番・橋本を三ゴロ併殺打に仕留めた。さらに4番・西川も内角直球で三ゴロ。127球目だ。高橋とのエース左腕対決を制し、左手でガッツポーズした。11回以上を投げた完封勝利は大会19年ぶりだった。

 「相手はいい投手。点を取るのは難しい。0に抑えれば最後に打ってくれると信じていた」。序盤はピンチの連続だった。初回2死一、三塁を切り抜けると、2回も1死満塁とされた。2年前のセンバツ優勝投手で同じ左腕の先輩、小島(早大に進学予定)の「最後はイン(コース)。気持ちでバッターに向かっていく」という言葉を思い出した。内角直球で二ゴロ併殺打。窮地を脱すると、その後も胸元を突いた。小島直伝の「強気」を貫いた。

 2年前の優勝時は高校入学前。江口はテレビで見て「先輩たちみたいに日本一になりたい」と誓った。直球は自己最速を3キロ更新する135キロをマーク。さらに小島から直伝された、もう一つの武器があった。カットボールだ。右打者の内角を攻めて、ファウルを打たせてカウントを稼いだ。今大会6年ぶりとなった0―0での延長戦突入。高橋に投げ勝ち、前々年覇者として、前年覇者の龍谷大平安を破った。

 「甲子園で投げられていることが奇跡。昨年の自分からは考えられない。素直にうれしい」。1年の夏、視神経の炎症で失明の危機にさらされた。視界不良は続き、年末年始に帰省した埼玉県内の実家から寮に戻る際には「野球をやっていく自信がない」と家族に漏らし、涙を流した。昨年の今頃は練習の手伝いと球拾いに明け暮れていた。「このまま終わるのか…」と失望しかけた昨夏、奇跡的に回復した。「支えてくれた方々に感謝したい」。家族、小島ら先輩、チームメートに励まされ、自身初の甲子園で最高の結果を出した。

 2年ぶりの大会制覇へ。そして意地と意地をぶつけ合った龍谷大平安ナインの思いも、その左腕に託された。「1勝を積み重ねた結果が優勝になればいい」。どん底からはい上がった男は強い。

 ◆江口 奨理(えぐち・しょうり)1997年(平9)12月22日、埼玉県生まれの17歳。小1から野球を始める。新曽中では軟式野球部で中3時にKボール全国大会で優勝。日本代表入りし、アジア大会準優勝。浦和学院では1年春の埼玉県大会でベンチ入りを果たした。家族は両親と妹2人。1メートル70、68キロ。左投げ左打ち。

 ≪78年ぶり≫13年優勝の浦和学院が、史上3校目の連覇を狙った龍谷大平安に勝利。センバツで前年と前々年の優勝校同士が対戦したのは、37年1回戦の岐阜商(35年優勝)―愛知商(36年優勝)以来78年ぶり2度目。前回も今回と同様、前々年優勝の岐阜商が5―2で勝利していた。

 ≪11回以上完封は19年ぶり≫浦和学院・江口が延長11回を投げ抜き、完封勝利。延長戦での完封は、09年富山商・村上が興南との1回戦で10回を投げて以来。11回以上に限ると、96年に智弁和歌山・高塚が国士舘との準々決勝で13回を投げて以来19年ぶり。

 ≪9年ぶり≫大会第3日は3試合とも勝利校の先発投手が完封。同日開催の3試合全て勝利校が無失点だったのは、06年第1日に神港学園・林、成田・唐川、智弁和歌山・竹中がいずれも完封して以来9年ぶり。

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