マー君「大事な時に一発で仕留められる」新球披露 ヒントは黒田

[ 2015年3月4日 05:30 ]

勢ぞろいした首脳陣の前で、今キャンプ初の打撃投手に登板する田中。左端はロスチャイルド投手コーチ、右から3人目はジラルディ監督

 ヤンキース・田中将大投手(26)が2日(日本時間3日)、今キャンプ初の打撃投手を務め、打者5人を相手に25球を投げ、6スイングで安打性の当たりを1本に抑えた。ひときわ、目を引いたのが、左打者の内角に投じたボールからストライクゾーンに入る通称「フロントドア」と呼ばれるツーシーム。伝家の宝刀であるスプリットに加え、田中の今季の新たなウイニングショットとなる可能性を感じさせた。

 左打席で思わず腰を引いたフローレスをあざ笑うかのように、田中が投じた内角ボールゾーンへのツーシームは、懐をえぐりながらすっとストライクゾーンに切れ込んだ。明確な意図を持った一球だった。

 「あくまで意表を突く球。カウントを取りにいく球じゃない。大事な時に一発で仕留められる。いいところに投げられる準備はしておきたい」

 今キャンプ初めて打者を相手にした投球。3人目に対峙(たいじ)した左打者のフローレスへの2球目が、通称「フロントドア」と呼ばれる軌道を描いた。

 苦しみの中から生まれた球だった。昨年7月に右肘を故障して約2カ月半の離脱。リハビリ期間中に、自身の投球を見つめ直した。右打者に対しては「フロントドア」のスライダーがある一方で、左打者の内角に入ってきて逃げるボールはなかった。ヒントを与えてくれたのは昨年のチームメートで、広島に移籍した黒田。「黒田さんが投げられているのはよく見てました。そういうボールを使っているピッチャーはこっち(米国)は多いので、有効だと」。復帰登板となった昨年9月21日のブルージェイズ戦の4回、川崎に試投して見逃し三振。スプリットに加え、新たな決め球となる予感を抱いた。

 この日の投球を受けた捕手のマーフィーも「あのコースは左打者には大きな武器になる」とうなった。この「フロントドア」があれば、左打者も容易には踏み込めず、ピッチングの幅は自然と広がる。同時に、1球で仕留めることで、球数を減らすこともできる。

 結局、打席には左が2人、右は3人が立ち、6スイングで安打性の当たりは1本。「あえて強く投げ過ぎないようにバランスを重視して、抑えめにいった。制球もまとまっていたし、(実戦の)最初の段階としては良かった。徐々に試合のレベルに近づいているし、そういう意味では順調」と田中。左殺しのフロントドアが、メジャー2年目のシーズンの鍵を握る。

 ▼ヤンキース・ジラルディ監督 田中はとても状態が良さそうに見えた。われわれの計画通りに調整できている。(オープン戦登板は)ブルペンでの投球練習か、シート打撃に投げた後になると思う。

 ▽フロントドア 相手打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンへと変化するボールのこと。逆に外角ボールゾーンからストライクゾーンへと変化するものはバックドアと呼ばれる。

続きを表示

この記事のフォト

2015年3月4日のニュース