大谷の「二刀流2年目」(1)先輩が後押し“夢舞台”で162キロ

[ 2014年12月19日 08:50 ]

球宴の第2戦で大谷は日本最速タイの162キロをマークした

 日本ハム・大谷翔平投手(20)が二刀流2年目を終えた。日本記録に並ぶ162キロを連発し、史上初の同一シーズン「2桁勝利&2桁本塁打」を達成。クライマックスシリーズ(CS)でも投打で奮闘し、日米野球では投手として強烈なインパクトを残した。大谷のシーズンを振り返る第1回は、甲子園で開催された7月19日の球宴第2戦で初めて叩き出した162キロの衝撃――。

 7月19日の球宴第2戦。ようやく太陽が沈み始めた甲子園のマウンドで、大谷は笑っていた。三塁側のパ・リーグベンチで西(オリックス)と則本(楽天)が大きな声を張り上げているのが見えた。セットポジションに入り「何を言っているかは聞こえなかったけど、何となく伝わってきた」。グラブを顔の前で構え、再び笑みを浮かべた。

 実は球宴前、この3人である約束をしていた。「みんな、直球でいこうか」。球宴だからこそできる力と力の勝負を誓い合った。前日の第1戦(西武ドーム)で3回からマウンドに上がった西が約束通りに直球で押したところ、2回6安打3失点と打ち込まれた。それでも、2人から「おまえ(大谷)は直球でいけよな」と指示は飛び続けた。捕手を務めた伊藤(オリックス)からも言われていた。「みんなが君の直球を見たいと思っている。いけるところまで直球でいこう」。大谷も「はい」とうなずいた。試合前ブルペンでは全て直球、それも全てど真ん中を目がけて投げ込んだ。「先輩」からの後押しで、気合は十分過ぎるほどに入った。

 初回。先頭の鳥谷への初球だった。当時の自己最速を1キロ更新する161キロをいきなりマーク。さらに、2球目だ。真ん中高めの速球は三塁側へのファウル。これが球宴新記録となる162キロを計測。08年にクルーン(当時巨人)が記録した日本記録に並び、スタンドはどよめいた。1死一、二塁から失点したところで、再びギアを上げた。「対戦したい打者」に名前を挙げていた阿部の初球に再び162キロ。最後は159キロで二ゴロに仕留めた。23球中21球が直球。160キロ以上を12球もマークした。

 大谷は力を入れて投げる時、前に踏み出した左足が手前に引き戻される。「バックステップ」といわれる動きがこの日も表れた。左足が戻る力を利用して右腕の振りを加速させるため、より速い球が投げられるが、軸が不安定になり制球がばらつきやすい。踏み込んだ左足を動かすことなく同じ腕の振りを再現することが理想だが、栗山監督は「翔平にはまだそれに耐え得る下半身の力がない」と解説する。

 異次元の投球はさらに続いた。レギュラーシーズン最終戦の10月5日の楽天戦(札幌ドーム)では162キロを4度もマーク。甲子園では「(球速を)出しにいったから、シーズン中とは感覚が違った」と話したが、札幌ドームでは「(球速を)出しにいってなかった。僕の中では(6日後に控えていた)CSの調整の一環だった」と振り返った。発展途上の中で記録した162キロだった。

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