原監督 ハワイで開眼…大阿闍梨の講義で“初心の情熱”再確認

[ 2014年12月16日 05:30 ]

大阿闍梨(あじゃり)の肩書を持つ慈眼寺の塩沼亮潤住職(左)と原監督

 開眼――。巨人の原辰徳監督(56)が優勝旅行先のハワイで13日(日本時間14日)に「大阿闍梨(あじゃり)」の肩書を持つ慈眼寺の塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)住職(46)の特別講義を受けたことを明かした。V9以来のリーグ4連覇が懸かる来季に向け、チーム解体を宣言している指揮官は常勝軍団をより強固なものにするために心を磨いた。チームは5泊7日のハワイ優勝旅行を終え、15日夜に成田空港着の航空機で帰国した。

 母校・東海大のハワイ校での特別講義。200人収容の会場は満員となった。その最前列中央に原監督は陣取った。1時間の講義を終えて質問タイムに入ると、真っ先に手を挙げ、質問した。

 「大阿闍梨さまは、過去に何人おられたのですか」。この問いに塩沼住職は「私で2人目です」と静かに返した。奈良・吉野の大峯山(標高1719メートル)山頂まで、往復48キロを1日も休まず、開山の間(5~9月)、1000日間登り下りする「千日回峰行」を99年に実施。「断念したら、自ら命を絶たなくてはいけない」という覚悟を持って臨むという。起床は午後11時30分、下山する翌日の午後3時30分まで16時間の荒行である。翌00年には9日間「食べない、水を飲まない、寝ない、横にならない」を続ける「四無行」を完遂。同様の修行を全て達成した者は1300年の間で、わずか2人しかいない。

 「2500年前、お釈迦(しゃか)様は“同じことを繰り返すと悟る可能性がある。しかし、情熱を失うと可能性はない”と言いました。初心の情熱だけは絶対に忘れてはいけません」。原監督は修行の重さをかみしめ、住職の言葉に何度もうなずいた。

 修行は白装束に着替え、滝に打たれる。熊にイノシシも出る獣道を歩み、夏はマムシが出る。雨で川が氾濫する時もあるという。今季、巨人はリーグ3連覇を達成しながら、CSファイナルSで阪神にまさかの4連敗。球団創設80周年の節目の年に日本一を奪回できなかった。打順を固定できず、144試合で計113通りのオーダー。その数字は原監督が苦しみ抜いた結果でもある。来季は「一回チームを解体して新しくつくる」と宣言。その1日1日の行程が「獣道」でもある。講義を聞き終えて言った。

 「すてきなプレゼントを、本当にありがとうございました。分かりやすい言葉で、分かりやすく話していただいた。喜びの中に修行がある。(その言葉が)一番印象に残りました」
 常勝を義務付けられる球界の盟主の将として、覚悟はさらに強く、固くなった。ハワイから帰国したその目は真っすぐに前を向いていた。

 ▼阿闍梨(あじゃり) 元はサンスクリット語で「規範」を意味する。伝統的な正しい態度、習慣などを知り、正しく諸戒律を守り、弟子たちの規範として、法を教授する師匠や僧侶のことをいう。最初の大阿闍梨は天台宗の僧侶だった故酒井雄哉氏。

 ◆塩沼 亮潤(しおぬま・りょうじゅん)1968年(昭43)、仙台市生まれの46歳。東北高卒業後、87年に奈良・吉野の金峯山寺で出家得度。00年に断食、断水、不眠、不臥(ふが)を9日間続ける四無行を達成。06年には100日間、五穀と塩を断ち、一昼夜護摩を焚(た)き続ける「八千枚大護摩供」を満行。現在、仙台の慈眼寺の住職を務める大阿闍梨(あじゃり)。

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