「辛いです」から7年 広島に戻った新井の環境様変わり

[ 2014年11月20日 10:30 ]

FA宣言会見で涙を流した新井(07年11月撮影)

 カープファンにとっては、青天の霹靂だろう。11月14日、今季限りで阪神を退団する新井貴浩が、古巣の広島に復帰することが決まった。

 2007年オフ、移籍会見時には涙ぐみながら、阪神にFA移籍することを発表した新井。涙ぐんで「カープ愛」を語りながら、なぜ、ライバルチームへ移籍するのか、ファンにとって理解に苦しむ移籍劇は、当時、大きな反響を呼んだ。

 あれから8シーズンぶりに古巣・広島に帰ってくる地元出身のスラッガーについて、過去の広島のFAの歴史もふまえながら、振り返ってみたい。

◎「辛いです……カープが好きだから」

 広島のFA史は、いわゆる“暗黒の歴史”と呼ばれている。チーム第1号のFA移籍選手は、イケメン左腕の川口和久。かつては北別府学、大野豊らとともに、先発三本柱としてカープ黄金期を支えた左腕だが、1994年オフにFA権を行使して巨人へ移籍。2ケタ勝利が途絶え、成績は下降気味ではあったものの、リーグ優勝に大きく貢献した投手。ファンにとって、複雑な思いもあっただろう。

 そして、その後もFA権を行使してチームを去る選手が続く。しかも、江藤智、金本知憲、そして新井貴浩と、4番打者が連続で同じセ・リーグで戦うチームに移籍。野球漫画でもあり得ないような、逆境の展開が起きてしまった。

 江藤は1999年オフに、巨人・長嶋茂雄監督から背番号33を譲り受けてFA移籍。広島が育てた“生え抜き”の主砲の移籍は、ファンに大きなショックを与えた。

 そして2002年には、江藤に代わって中軸打者に成長した、金本知憲が阪神へ。さらに2007年、金本を師と仰ぐ、同じ広島県出身の新井が、後を追うように阪神へと移籍していった。当時の会見で、新井が涙ながらに語った「辛いです……カープが好きだから」は、今でも語り草になっている。

◎引き金はやはり師と仰ぐ金本の流出か?

 当時の野球ファンは、号泣しながらカープ愛を語る新井が、なぜ阪神に移籍するのか、理解不能であった。その理由として挙げられるのが、前述した金本の移籍劇だ。

 2002年オフ、FA権を得た金本は、広島残留を基本線としながら、FA権を行使した上での残留を訴えた。「後輩のために、FA権を行使して残留の前例を作りたい」と主張した金本に対して、球団側は「FA権を行使しての残留は認めない」の一点張りで交渉は破談。結果、江藤に続いて、主砲をライバルチームに渡してしまったのだ。

 この球団とのやりとりを最も間近で見ていたのが、新井。金本には当時からいろいろな意味で可愛がられており、尊敬する同郷の先輩選手と、球団とのやりとりに失望したのか、金本を追うように阪神へFA移籍したのだった。 

◎移籍時とはガラリと変わったカープの陣容

 いずれにせよ、新井は広島に帰ってきた。阪神での今季推定年棒2億円から、約90%減の2000万円で広島と契約したといわれており、阪神が提示した8000万円から大幅に下回る金額にもかかわらず、古巣復帰を決めたという。

 ただし、新井が他球団へ飛び出した時の広島と、現在の広島は当然ながら、その陣容は大きく変わっている。新井が出場するとなれば、一塁手か三塁手での出場が有力的だろう。しかし、一塁手にはエルドレッドをはじめとする外国人選手、三塁手には梵英心や木村昇吾がおり、堂林翔太も戻ってくる。果たして新井はレギュラーを勝ち取れるか、出番はあるのか。広島ファンならずとも、多くのプロ野球ファンの注目を集めることは間違いないだろう。(週刊野球太郎編集部)

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