工藤新監督、15年前のファンの思いに「恩返し」 15万人署名も移籍

[ 2014年11月2日 05:30 ]

王球団会長(右)と握手する工藤新監督

 ソフトバンクは1日、工藤公康氏(51)の監督就任を発表した。3年契約で、背番号は秋山幸二前監督(52)と同じ「81」。同日、福岡市内で会見した工藤新監督はプロ野球史上初となる異なる監督での日本一連覇を目標に掲げた。さらにエース・摂津を脅かす若手投手の育成や故障を防ぐコンディショニング部門強化など「工藤流」のチームづくりを打ち出し、常勝軍団確立を目指す。

 就任会見での口調は力強かった。そこには常勝軍団確立へ、強い決意が込められていた。

 「プレッシャーは当然ある。日本一になったソフトバンクホークスですから。その地位、強さを維持していきながら、連覇を目指してやっていくかは非常に大切。そこを胸の中にしまいこみ、常に強いチーム、継続できるチームをつくるというのを、しっかりとやっていきたい」

 工藤監督は現役時代は西武、ダイエー、巨人の3球団で日本一を経験している。ただ、プロ野球史上、異なる監督が日本一連覇した例はない。「強いチームは一時的にはできても継続することは非常に大変」と、掲げた目標の難しさは誰より熟知している。

 ソフトバンクの監督は、前身のダイエー時代から野手出身者が続いた。投手出身は1989年の杉浦忠監督までさかのぼる。ただ、初の監督業ながら、すでにチームの課題は把握している。柳田、今宮ら若手が台頭した攻撃陣よりも、投手陣に目を向ける。先発、中継ぎを問わず、今の主力を脅かす存在が出てこないと、選手層は厚くならない。日本一のチームにも「まだまだ能力を発揮できていない人はたくさんいる。きっかけを与えたい。(エースの)摂津君を脅かす存在をつくらなくてはいけない」。キャンプ視察した評論家時代、158キロの来季6年目左腕・川原に密着指導するなど目を付けた「原石」の研磨に意欲的だ。

 現在、筑波大大学院人間総合科学研究科で「外科系スポーツ医学」を学ぶ。「落ちていくチームはケガ人が多かったり、主軸に思わぬアクシデントがあったりする」と分析した上で、「一日でも長くユニホームを着るというのは選手にとって何よりも大切なこと」。大学院で学んだデータに基づいたトレーニング理論を野球と融合させるのは「試す価値はある」と語る。戦力を落とさせないための故障予防の取り組みである。

 99年にFAで巨人移籍した際、残留を願う福岡のファン約15万人の署名が集まった。「ファンの方々の残ってほしいという願いをかなえることができなかった。きょうの時点からしっかりとファンの皆さんに頂いた恩を返したい」。15年ぶりに指揮官として帰ってきた男は、日本一の恩返しを高らかに誓った。

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