【金本知憲の目】次はスライダー ゴメス確信させてしまったあの一球

[ 2014年10月26日 09:50 ]

<神・ソ>4回2死一、二塁、藤井の打球をジャンプして避けながら走塁する二走・ゴメス

日本シリーズ第1戦 阪神6-2ソフトバンク

(10月25日 甲子園)
 相手の勝負球を読み切った。阪神が先勝した日本シリーズ第1戦。スポニチ本紙評論家の金本知憲氏(46)は5回のゴメスの2点適時打について、ソフトバンクバッテリーが直前に選択した2球目の外角直球が、打者心理として「スライダー勝負」を確信させたと指摘した。その一方でソフトバンクが随所で取った作戦は間違っておらず、「裏目」に出ただけとの見解も示した。

 ◆ツーシームを打ち返した先制打が伏線 5回、ゴメスの2本目の適時打が試合の大勢を決めた。1点リードで迎えた2死満塁の好機。ゴメスの頭の中ではスライダーが相当な割合を占めていたと思う。伏線は先制打した4回の第2打席だ。1死二塁から初球のツーシームを左翼線へ打ち返していた。スライダーを武器とするスタンリッジにすれば、得意球を打たれたわけではなかった。だから、次に訪れた重要局面ではスライダー勝負を選んだ。捕手の細川もスライダーしか選択肢がないと感じていたのでは。

 初球に真ん中付近に来たスライダーをゴメスが見送り、2球目の直球は外角に完全に外れた。カウント1ボール1ストライク。この2球目が打者目線からすれば明らかな見せ球になった。

 最初からスライダーにある程度の狙いを定めていた打席。仮に自分が打者なら、あの2球目でを見て「直球はもうない。次は絶対に変化球だ」と確信したと思う。もし2球目の直球が真ん中高めや内角高めのボール球だったなら、少なからず迷いが生まれていたかもしれない。同じ直球の見せ球でも、違う見せ方だったら結果も変わっていたかもしれない。

 初球のスライダーを見送ったことも布石になったように感じた。ゴメスの心情までは分からないが、自分の経験に照らし合わせれば、狙い球だからこそ再確認のために軌道を一度見たのでは。ミスショットの確率を減らすためだ。

 (1)直球の見せ球で次のスライダーを確信し(2)軌道も確認していたことで3球目の外角低めの難しいスライダーを打ち返すことができたと思う。狙ったところへ投げた得意球を打ち返されたスタンリッジはショックだっただろう。相手に大きなダメージを与える一打になった。

 ◆攻守両面で方向性間違っていない 3点差になった5回、なおも続いた2死一、二塁の状況でマートンを打席に迎え、ソフトバンクの外野陣は前進守備を敷いた。まだ中盤の5回。相手が外国人5番打者ということを考えれば、前進守備の選択を躊躇(ちゅうちょ)しかねない場面だった。

 相手投手はメッセンジャー。もう1点を奪われたら逆転は相当難しくなる。だから、後に守って5点目を防ぐのではなく、前に守って4点目を防ぐことを考えたのだろう。大賛成だった。

 結果は中堅手の柳田が頭上を越された。深く守っていれば捕れた打球だったかもしれないが、これこそ結果論だ。マートンは外国人打者だが、相対的に長打よりも単打の方が多い。特に走者を置いた好機での適時打は単打の方が多い。そういうデータも根拠にした守備隊形だったのだろう。

 3回の攻撃では無死一塁から細川、スタンリッジに2者連続で送りバントを試みた。結果はスタンリッジは失敗したが、左打者で足の速い柳田の前に2死三塁をつくる意図は理解できた。攻守両面で結果にはつながらなかったが、「正しい裏目」だったと感じた。方向性は間違っていないと思う。だから、黒星スタートでもシリーズの流れはまだ分からない。

 ◆阪神の心配は上本 阪神打線は全体的に巨人を4連勝で破ったCSファイナルステージからの好調を持続できていた。打順1巡目を終えて、スタンリッジのカウント球が甘く来ていたことを見定めたのだろう。ベンチから指示が出ていたかどうかは分からないが、2巡目からは第1ストライクを積極的に打ちに出たことも功を奏した。

 ただ一人、心配に映ったのは上本だ。腰が完全に開いてしまって、打つ時にヘソを投手側に見せる形になっていた。先制点につながった4回の中前打もバットの先で何とか拾った打球だったし、2つの三振はいずれも腰の引けたスイングだった。形が崩れている。好調な中軸の前に好機を多くつくるには2番打者の役割は大きい。2戦目以降の復調具合にも注目したい。

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