藤浪 20歳6カ月勝った!セ・ポストシーズン史上最年少勝利

[ 2014年10月16日 05:30 ]

<巨・神>7回のピンチを切り抜けた藤浪は雄叫びを上げる

セ・リーグCSファイナルS第1戦 阪神4-1巨人

(10月15日 東京D)
 普段は感情を表すことのない阪神・藤浪が魂の雄叫びだ。7回。阿部に一発を浴び、さらに3連打で無死満塁とされた。リードは3点。ここでスイッチが入る。代打・セペダを153キロ直球で一ゴロ併殺打。さらに代打・井端を151キロで一飛だ。「オッシャー!」。背番号19は右手でグラブを叩き、激しいガッツポーズを繰り出した。

 「普段はなかなか、そういうことはしない人間なんですけどね。ピンチで逆に開き直って、思い切り腕を振っていった」

 7回6安打1失点。20歳6カ月は、ポストシーズンのセ・リーグ最年少勝利だ。立ち上がりから飛ばした。「初回に3点取ってもらって、気持ち良く思い切って投げられた」。初回、長野への初球が153キロ。3番・坂本の4球目には自己最速タイの157キロをマークした。悔いが残らないように力で押した。117球のうち直球が半数以上の65球を占めた。

 「晋太郎、頼むぞ!」。CSファーストS突破が決まると、和田監督からファイナルS初戦の先発を告げられた。昨年の苦い思い出。10月12日、広島とのファーストS初戦(甲子園)の先発に抜てきされながら、5回4失点で敗戦投手となった。加えて今季、巨人戦は東京ドームで2試合登板して2敗。それでも、大事なマウンドに立った。「初戦を任せてもらって意気に感じた。(7回は)苦しい場面で信頼してもらえた」。重圧をはねのけ、充実感に浸る顔がそこにはあった。

 期待以上の結果を出した右腕だが、実は首脳陣は冷静な計算も働かせていた。中西投手コーチが初戦起用の理由を説明する。「勢いがあって、多少ばらつきのある投手なら、2戦目(以降)も打者が崩される可能性があるからね」。短期決戦。相手は1勝のアドバンテージがある。ならば、の答え。確かに藤浪は初回に31球を要するなどボールにばらつきがあった。これが吉と出るか。第6戦に中4日で起用できるという腹づもりもある。

 6回まで無失点。その時点でチームは広島とのファーストSから27イニング連続無失点となり、58年日本シリーズで西鉄が巨人相手にマークした26イニングを抜く新記録となった。

 お立ち台。藤浪は最後に言った。「日本一しか目指すところはないんで」。左翼席の虎党が、大歓声で応える。大仕事を終えた男は、どこまでも頼もしかった。

 ≪セに限れば最年少勝利≫20歳6カ月の藤浪(神)がCS初勝利。プレーオフ、CSでは82年工藤(西)の19歳5カ月を筆頭に5番目の年少勝利で、セに限れば11年赤川(ヤ)の21歳3カ月を抜く最年少勝利だ。また、62年日本シリーズ第1戦の村山実(25歳10カ月)を下回るポストシーズンのチーム最年少勝利にもなった。この日は6回まで巨人を0点に抑え、チームはファーストS第1戦の初回から27イニング連続無失点。ポストシーズンでは、58年西鉄が日本シリーズの巨人第5~7戦でマークした26イニングを抜く連続無失点の新記録を達成した。

 ≪阪神はどうか≫阪神が第1戦を制し対戦成績を1勝1敗とした。プレーオフ、CSファイナルSで1勝1敗に追いついた球団は過去に延べ9チーム。うち日本シリーズ進出は75年阪急、04年西武、10年ロッテだけで、アドバンテージの1敗からとなると前記のロッテしかない。データ上は苦しく、セ球団の勝ち上がりはないが、阪神はどうか。

 ≪従来記録は稲尾1人で26イニング≫

 ☆58年の西鉄―巨人の日本シリーズ 西鉄・稲尾和久が7試合中6試合に登板。3連敗で迎えた第4戦は完投勝利。第5戦の4回からは救援登板し、延長10回に自らサヨナラ本塁打を放った。第6戦は無四球完封勝利。第7戦は完封目前の9回、長嶋茂雄にランニング本塁打を許したが、巨人相手に26イニング連続無失点の快投。4連投4連勝でチームの逆転日本一に貢献し、これを機に「神様、仏様、稲尾様」の呼び名がついた。

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