ソフトB五十嵐手記 去年の悔しさをいい意味で引きずって投げ抜いた1年

[ 2014年10月3日 08:12 ]

<ソ・オ>10回2死満塁のピンチを切り抜けたサファテ(背58)と抱き合う五十嵐

パ・リーグ ソフトバンク2-1オリックス

(10月2日 ヤフオクD)
 【五十嵐亮太独占手記】優勝まで本当に苦しかった、長かった。今は安心感と喜びでいっぱい。だから、今夜のビールの味は格別。自分たちが1年間やってきた結果があって、みんなで楽しめる。ビールかけは飲まない人も多いけど、僕は飲む。ガスの抜けたビールでもうまい。こんなにいいお酒は人生の中でもなかなか味わえないからね。

 今年は去年の悔しさを忘れたらいけないと、いい意味で引きずっていた。去年、4年ぶりに日本球界に復帰し、ソフトバンクに入った。勝つことが当たり前、優勝することが当たり前とされているチーム。だから、去年は本当に悔しさしか残らなかった。クライマックスシリーズすら行けず、あれっ?という感じで終わり、ぼーっとした日が続いた。物足りなさ、寂しさで気の抜けた状態だった。だから今年に入っても「去年の負けを忘れていない」としつこく言って「いまだに切り替えができてないやつ」と思われていたのかもしれない。だが、その思いは今でも残っている。

 今年に関しては、自分の理想とするピッチングにとても近かった。基本はストレート主体の投手。それプラス、何が自分でできるかというところで、変化球の質と精度を上げることがいつも課題だった。今年はナックルカーブ、カットボールの使いどころがうまくはまった。シーズン中盤から後半にかけては、クイックをさらに速くしたり、足を上げたりと、打者のタイミングを外すために工夫した。

 優勝を目前にした9月25日の楽天戦(ヤフオクドーム)。2点リードの7回1死一、二塁の場面でマウンドに上がった。4つの押し出し四球を与え、逆転負け。ただ、優勝の重圧といったメンタルが原因ではない。技術的な問題だった。連敗中にようやく打線がつながり、投打がかみ合った中で仕事ができず、チームに迷惑を掛けた。その日の試合後、監督室に初めて呼ばれた。秋山監督から「おまえが今までやってきたことは、みんな分かっている。原点の投球に戻した方がいいんじゃないか」と言葉を掛けられた。その日はタイミングの取り方を変えて、マウンド上で迷いが生じていた。本来のタイミングの取り方は早くも遅くもないクイック。その一つに絞った。自分でもいけないピッチングをしたと分かっていた。自分の意見と監督の意見が一致したので、納得して切り替えられて、次の試合は自信を持って投げることができた。経験をしている人の意見は大きかった。

 アメリカでは今まで経験しなかったことを経験した。同時に、自分の中で勝手に可能性を狭めていたことに気付かされた。日本ハムの大谷君が打者の方がいい、投手の方がいいとかいろいろ言われて、両方やるなんてふざけるなという風潮さえあったのに両方できている。彼の志にはとても魅力を感じてしまう。周りを気にしすぎずに自分のやりたいことに挑戦していけばいいと思う。僕も可能性を広げて、これからも新しいことにどんどんトライしたい。例えば先発とかね。やったことがないので、周りから「おまえ、先発はできないだろ」と言われるのがしゃくだから。あまのじゃくなところがあるんでね。でも先発は1回やるだけじゃ駄目。シーズンを通して先発をやり続けてこそ先発と思う。 (福岡ソフトバンクホークス投手)

 ◆五十嵐 亮太(いがらし・りょうた)1979年(昭54)5月28日、千葉県生まれの35歳。敬愛学園では甲子園出場なし。97年ドラフト2位でヤクルト入団。04年に37セーブを挙げ最優秀救援投手に輝いた。09年オフにFAでメッツ移籍。12年はパイレーツとマイナー契約。ブルージェイズ、ヤンキースを渡り歩き、13年にソフトバンク入り。1メートル78、94キロ、右投げ右打ち。

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