由伸 天国の父にささげるアーチ スタメン復帰即「いい供養になった」

[ 2014年8月24日 05:30 ]

<巨・中>ヒーローインタビューを終えて天を見上げる高橋由

セ・リーグ 巨人4-1中日

(8月23日 東京D)
 天国の父に届け!巨人・高橋由伸外野手(39)は23日、中日戦で2点リードした6回に貴重な追加点を叩き出す6号ソロ。18日に父を亡くしてから初の先発出場で、バックスクリーン右へ手向けのアーチを運んだ。投打がかみ合ったチームは3試合連続の逆転勝ちで3連勝。チームはリーグ一番乗りで60勝に到達し、2位・阪神とのゲーム差を2・5に広げた。

 二塁ベースを回った高橋由が、一瞬だけ東京ドームの天井に目を向けた。「見ていてくれた?」。心の中ではこう、語り掛けていたのかもしれない。天国で見守る父にささげる手向けの一発となった。

 「手応えは良かった。入ってくれるかなと思っていた。いい供養になったと思います」

 先頭の6回。3ボール1ストライクから真ん中の138キロ直球を捉え、バックスクリーン右まで運んだ。18日に父・重衛さん(享年75)が心不全で亡くなってから初の先発出場。「若干、寂しいのはある。さすがに、すぐに“大丈夫”と切り替えられたと言えばウソ」。悲しみを胸にしまい、アーチを届けた。

 突然の訃報は18日早朝。広島市内の宿舎で就寝中に携帯電話が鳴った。兄からの着信。「あんな時間だし、何かあったな」。嫌な予感は的中した。チームとともに帰京後、千葉市内の実家に直行。安らかに眠る姿に「最初は信じられなかった。眠っているようで、起きるんじゃないかと思った」と、目を腫らした。

 「野球人・高橋由伸」の生みの親だ。幼少期から自宅の庭で指導を受けてきた。2メートルを超える竹で素振りをさせられた。長い分、無駄のないスイングでなければヘッドは走らない。この日の本塁打は最短距離でバットを出し、上から叩いてライナー性の打球を打った。「基礎がそこ(父)。教えてもらった打撃ができた」と振り返った。

 これまで心から野球を楽しんできたわけではなかった。「小さい頃は練習もきつくて」と背を向けたこともあった。そのたびに、父から「もう少しだけ楽しませてくれ」とお願いされた。桐蔭学園に進学する時も「いつまでも長く(野球を)やれとは言わないから」と父を中心に家族に懇願された。もしあの時、あの言葉がなければ、プロ野球選手にはなっていなかったかもしれない。

 21日は通夜のため欠場したが、前日は告別式を終えると、試合途中に東京ドームに到着し延長10回に代打で二塁打を放った。この日はチームの3連勝を決定づけ、リーグ60勝一番乗りに導いた。開幕時から代打起用が続いていたが、8月に入りこれで10試合目のスタメン。「一日でも長く、一試合でも多く試合に出たい。これからも現役で頑張ります」と39歳のベテランの意志は固い。

 試合後、観客と球団関係者の計らいでホームランボールが手元に戻ってきた。墓前に供えるため、大切に大切にバッグにしまい、帰路に就いた。

 ▼巨人・原監督(高橋由の本塁打に)あれくらいの集中力で臨んでくれると心強い。

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