杉内 新球?実はサインミスだった! 超スローボール 

[ 2014年5月21日 05:30 ]

<西・巨>7回2死一塁、杉内は超スローボールで炭谷を中飛に打ち取る

交流戦 巨人9―1西武

(5月20日 西武D)
 交流戦男の真骨頂だ!10年目を迎えたプロ野球の日本生命セ・パ交流戦が20日に開幕し、巨人は投打がかみ合って西武に快勝。杉内俊哉投手(33)が7回を5安打1失点(自責0)と好投し、交流戦最多となる通算25勝目を挙げた。開幕から不安定な投球が続いていたが、生命線のチェンジアップもさえ、今季初の無四球。チームも交流戦中の首位奪回へ、好スタートを切った。

 投げた杉内本人も、そして捕手の阿部も驚いた。4点リードの7回2死一塁。炭谷への初球だ。直球の握りで右足を上げた瞬間に気付いた。「サインが違う。阿部さん捕れないかも…」。実は一塁けん制のサインが出ており、阿部は立ち上がろうとしていた。

 とっさに投じたのは山なりの超スローボール。計測不能の「遅球」に球速表示は111キロだったが、実際はその半分くらいだろう。これに食らいついた炭谷の打球は中飛。交流戦初戦で衝撃の新球披露かと、球場はどよめいたが、杉内はマウンドを降りる際にニヤニヤと表情を崩し、阿部も「わざとじゃないよ」と苦笑いするしかなかった。

 練習中から行う独自の山なりキャッチボールが、こんな場面で功を奏した。通常、キャッチボールやブルペンでは一定して速い球を投げる。だが杉内は「体に力が入り過ぎないように」と5、6球に1度、山なりの球を挟む。巨人移籍1年目には興味を抱いた内海が、理由を聞いてきたこともあった。杉内いわく、140キロの直球を投げた直後に緩いボールを投げるのは「意外と難しいんだよ」。この日は力を込めて始動したフォームから、見事に一気に力感を抜きピンチを切り抜けた。

 宮崎キャンプ中には大きな決断も下していた。昨季まではベルト付近にグラブを置き、その中でボールを握ってきたが、それを変えた。頭上や胸の前、時には以前と同じベルト付近。試行錯誤を続け、3月のオープン戦から数パターンを織り交ぜる形に落ち着いた。きっかけは、新加入・井端からの助言だった。

 「ボールを握る時に癖が出ている」。昨季まで相手ベンチから見ていたベテランの一言。「あれが昔からのルーティン。癖の話は前にも聞いたことがあったけど、できれば変えたくなかった。でも直接、相手チームだった井端さんに言われて“変えないと”と思わせてくれた」。復調へのきっかけを模索中だったこともあり、すんなりと受け入れることができた。

 ソフトバンク時代から何度も対戦した西武相手に7回5安打1失点。「どの球種も良かった」と癖を気にすることなく、打者に集中して腕を振れた。5月は無傷の3連勝。開幕から約1カ月が経過し、体がなじんでくる5月は「ミスターメイ」と呼ばれるほど得意な季節だ。バットでも3回の打席で先頭で中前打を放ち、一挙4得点につなげた。

 交流戦元年から毎年、白星を重ね、最多の通算25勝目。交流戦男の復活は、首位奪回を目指すチームにとって頼もしい限りだ。

 ▼西武・炭谷 打てる球だったから打った。でもヒットにならなければ、何やってんだという感じ。

 ▼巨人・原監督 今シーズン一番良かったんじゃないでしょうか。リズムも良かったですし、攻撃的でしたし、本来に近い投球だった。

続きを表示

この記事のフォト

2014年5月21日のニュース