ダル あと1人再び「逆に世界記録をつくって伝説に」

[ 2014年5月11日 05:30 ]

<レンジャーズ・レッドソックス>あと1人のところでノーヒットノーランを逃し、降板するダルビッシュ

ア・リーグ レンジャーズ8―0レッドソックス

(5月9日 アーリントン)
 また、あと1人!レンジャーズのダルビッシュ有投手(27)は9日(日本時間10日)、レッドソックス戦で9回2死から初安打を許し、野茂英雄以来、日本人2人目のノーヒットノーランはならなかった。昨年4月2日のアストロズ戦でも9回2死からパーフェクトを阻まれており、「あと1人」で無安打無得点試合を2度以上逃したのは、大リーグ史上3人目。それでも今季初の2桁となる12奪三振で、昨季ワールドチャンピオン相手に3勝目を挙げた。

 悲鳴とため息が交錯した。大リーグを代表する強打者オルティスに対し、ダルビッシュの投じた126球目。2ボール1ストライクから、151キロの直球が甘く真ん中に入った。「オルティス・シフト」を敷き、一、二塁間には3人が守っていたが、二塁手と遊撃手の狭い間を打球が抜けていった。大記録は再び手のひらからこぼれ落ちた。

 厳しい表情のまま、外野に視線を向け続けた。メジャー初完投もかかっていたが、ここで交代。満場のスタンディング・オベーションに、ベンチの手前で帽子を取った。疲労と、またもあと1人で快挙を逃した悔しさ。それでも会見では開口一番、周囲を笑わせた。

 「2回目なので。逆にこういう投球を多くして、あと1人でできなかった世界記録をつくって、伝説になりたいです」

 2年連続の悲運。「(終盤は)できるかなあ、どうかなあと思っていた。もちろん悔しい」と正直に明かした後「チームが勝ったので良かった」と笑顔で振り返った。

 2回2死から球団記録にあと1と迫る6者連続三振。7回2死まではパーフェクトに抑えた。21人目の打者・オルティスの打球は高々と舞い上がったが、深追いした二塁手オドルと右翼手リオスがお見合いし、その間にポトリ。しかし、記録は「失策」でノーヒットノーランはつながった。

 「ヒットかなと思ったけど、スコアボードを見たらエラーだった」。もう一度、集中力を高めたが、次打者に初の四球を与えるなど、その直後から直球がばらついた。9回は最後の力を振り絞った。「疲れていたので、あそこ(7回)でヒットにしてくれていてもよかったかな」とも言った。

 その右腕には確かな手応えが宿っていた。126球中86球を速球系が占め、うち70球がフォーシームだった。ツーシームも織り交ぜたが「あくまでフォーシームのアクセント。手応えはなくて大丈夫」。どこまでも力で押した。

 前回4日のエンゼルス戦では初回に2被弾し、3回以降はフォームを修正して直球が良くなったと明かした。「前回とはまた別で、もう一回フォームを見直した。それが今回はきちんとできたし、いい時の感覚を取り戻せた」。この試合前まで空振り率(全投球に対する空振りの割合)は両リーグ51位の9・2%だったが、この日は18度(14・3%)の空振りを奪った。今季は首の寝違えで出遅れたが、ようやくマウンドで躍動する本来のスタイルを取り戻した。

 「調子自体は一番ではないが、内容は凄く良かった。きょうはきょうで終わったこと。切り替えて次にアジャストしていきたい」とダルビッシュはすっきりした表情で視線を前に向けた。口にした「伝説」の領域に足を踏み入れようとしていることは、世界の誰もが認めるところだ。

 ▼レンジャーズ、ロン・ワシントン監督 彼がチームに来てから、一番いい球を投げていたと思う。フォーシームに力があった。こういう投球を続けていれば、そのうちチャンスはある。それだけの能力を持っている。

 ▽前回の快挙まで「あと1死」 13年4月2日のシーズン初登板となったアストロズ戦で、初回に2者連続三振を奪うなど5回までに10三振。5回には強烈なライナーを一塁手モアランドが好捕する守備にも助けられ、9回2死まで完全投球。しかし、あと1人という場面で111球目のカットボールを9番・ゴンザレスに中前に運ばれた。安打を許したところで降板。8回2/3を1安打無失点、14奪三振だった。

 ≪史上3人目 3度の強者も≫大リーグで9回2死からノーヒットノーランを2度以上逃した投手としては、ダルビッシュが史上3人目。過去にはビル・バーンズ(セネタース=現ツインズ)が1908年と09年に1度ずつ、デーブ・スティーブ(ブルージェイズ)が88年に2度、89年に1度。日本のプロ野球では仁科(ロ)と西口(西)の2人で、いずれも2度。

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