さらば球界の名士…“怪童”尾崎行雄氏　長嶋さんも驚いた剛速球

尾崎氏の速球は１６０キロを超えていたという声も

　≪法政二と名勝負　浪商で６１年夏Ｖ≫剛速球で球界に衝撃を与えた尾崎行雄氏（享年６８）は「怪童」の異名をとった。浪商１年の６０年夏から３季連続で甲子園に出場し、柴田勲を擁する法政二と３度の名勝負を繰り広げた。６１年夏に全国制覇を果たすと、２年で中退し東映入団。翌６２年にいきなり２０勝を挙げ、新人王、チームを初優勝に導いた。球宴で対戦した長嶋茂雄（巨人）をして「速い！あんな速い投手はセ・リーグにいない」と驚がくさせた剛速球は、１６０キロを超えていたとも言われる。２９歳での引退後は球界の一線から退いた一方、少年野球を指導するなど野球への情熱は変わらなかった。

　≪“江戸っ子投法”土橋投手≫浅草出身で江戸っ子気質の土橋正幸氏（享年７７）は「ちぎっては投げ」のテンポの速い投球が持ち味だった。軟式出身から５５年東映にテスト入団し、エースとして通算１６２勝の活躍。５８年に９者連続奪三振、１試合１６奪三振の記録を樹立した。６２年には球団初のリーグ優勝と日本一に貢献。日本シリーズＭＶＰに輝いた。引退後はヤクルトや日本ハムの監督を歴任。沢村賞選考委員長を務め、べらんめえ口調の解説者として親しまれた。昨年１２月に解説者を降板後も、自宅で「田中（楽天）は面構えがいい」などと「解説」していたという。

　≪松山商・一色俊作氏、岩倉・望月市男氏　甲子園沸かせた名将も≫甲子園を沸かせた名将の悲報が続いた。６３年から７４年まで松山商の監督、部長を務めた一色俊作氏は、甲子園に春夏計３度出場。三沢と史上初の延長１８回引き分け再試合に勝って優勝した６９年夏の決勝は、伝説の試合として今なお語り継がれている。その後は新田の監督として９０年センバツに初出場し準優勝、「ミラクル新田」と呼ばれた。岩倉を率いた望月市男氏は、８４年センバツ決勝で当時２年生の桑田、清原を擁するＰＬ学園を破り、初出場初優勝を果たした。

　≪球界再編に尽力≫プロ野球第１１代コミッショナーを務めた根来泰周氏が他界したのは、自身が球界参入を決めた楽天が初の日本一となった翌朝だった。就任して間もない０４年６月、近鉄とオリックスの合併に端を発する球界再編問題が勃発。野球協約の不備を指摘し「権限は私にはない」という姿勢が批判を浴びながらも慎重に新球団参入の選定を進め、協約の抜本的な改定に尽力した。「社会貢献を重視すべき」という根来氏の信念は、同じ検事出身で自ら顧問に招へいした熊崎勝彦新コミッショナーに引き継がれる。

　≪さらば球界の名士≫

　▼１月６日
趙　ソンミン（享年３９　元巨人投手）

　▼同１９日
スタン・ミュージアル（享年９２　元カージナルス外野手）

　▼２月２日
ラボン・ペア・デービス（享年８８　元全米女子プロ野球選手）老衰

　▼３月２３日
萩原　宏久（享年６８　元日大三監督、元巨人チーフトレーナー）肺がん

　▼４月２日
平田　英之（享年５８　元ロッテ投手）肺がん

　▼同１２日
大友　工（享年８８　元巨人投手）急性白血病

　▼同２４日
一色　俊作（享年７５　元松山商監督）虚血性心不全

　▼同２４日
長谷川　一夫（享年６８　元ロッテ外野手）

　▼同２７日
ブラッド・レスリー（登録名アニマル、享年５４　元阪急投手）腎不全

　▼同２８日
大脇　照夫（享年８３　元国鉄投手）肺炎

　▼同２９日
内藤　博文（享年８２　元巨人内野手）心不全

　▼５月２０日
山崎　弘美（享年８０　元巨人捕手、元巨人マネジャー）呼吸不全

　▼６月２日
相馬　勝也（享年５０　元西武捕手、西武２軍ディレクター補佐兼育成担当）胃がん

　▼同１３日
尾崎　行雄（享年６８　元東映投手）肺がん

　▼７月１日
武智　文雄（享年８６　元近鉄投手）心不全

　▼同３日
倉島　今朝徳（享年７３　元国鉄内野手、元ヤクルト球団専務）心不全

　▼同１３日
望月　市男（享年７３　元岩倉監督）肺気腫

　▼同１５日
石井　晶（享年７３　元阪急外野手）

　▼８月２４日
土橋　正幸（享年７７　元東映投手、元ヤクルト、日本ハム監督）筋萎縮性側索硬化症

　▼同２８日
五十嵐　辰馬（享年８３　元巨人外野手）急性心筋梗塞

　▼９月８日
上野　武志（享年８２　元宇都宮学園監督）

　▼同２４日
村上　弘（享年７６　元ダイエー球団社長）肺炎

　▼同２８日
堀　新助（享年９４　元パ・リーグ会長）老衰

　▼１０月２１日
笠井　和彦（享年７６　ソフトバンク球団社長兼オーナー代行）肺カルチノイド

　▼同２８日
川上　哲治（享年９３　元巨人内野手、元巨人監督）老衰

　▼１１月４日
根来　泰周（享年８１　元コミッショナー）肺がん

　▼１１月２４日
田代　和（享年８６　元近鉄オーナー）心不全

　＝敬称略＝