八百長疑惑に賭博事件…冬の時代を乗り越えた台湾球界

[ 2013年12月12日 13:05 ]

アジアシリーズで楽天と対戦した義大ライノスのチアガール

 田中将大(楽天)の無敗記録やバレンティン(ヤクルト)の本塁打記録更新、16年ぶりにAクラス入りを果たした広島、大谷翔平(日本ハム)の二刀流デビュー…。あまりの盛り上がりに、来季以降が心配になるほどのシーズンを終えた今年の日本プロ野球界。同じく、隣国の台湾プロ野球界も、空前の盛り上がりをみせたシーズンだったという。

 台湾プロ野球界は過去、何度も存続の危機に直面した経緯がある。相次ぐ八百長疑惑や賭博事件でファンの関心は離れ、人気は下落。2000年には1試合平均観客数が約1,600人まで落ち込み、昨季の平均観客数は約2400人だった。

 しかし、今シーズンの台湾プロ野球界には大きな変化が起きた。今春のWBCでのチャイニーズ・タイペイ代表の躍進で、台湾の人たちの野球を見る目はいっぺんに変わり、台湾ナインは国民的ヒーローに。1次予選では韓国に競り勝ち、2次予選では日本と接戦を演じて、台湾球界復活とも言えるようなベスト8という結果を残した。

 その勢いで開幕した今年の台湾プロ野球国内リーグ。義大ライノズ(前身は興農ブルズ)は、メジャー歴代14位の通算555本塁打を誇る"史上最強の助っ人"マニー・ラミレスを獲得。デビュー戦では歴代最多の2万人の観客を集めたという。結果、台湾球界関係者によれば、今季のリーグ観客動員数は昨季の2倍以上に増えたそうだ。

 そして記憶に新しいアジアシリーズでは、台湾リーグチャンピオンの統一ライオンズが日本王者の楽天に勝利。WBCの例を挙げるまでもなく、台湾野球のレベルは着実にアップしているといってよいだろう。現在も台湾で行われているアジア・ウインターリーグで日本、韓国、ドミニカ共和国を相手に、台湾の若手選手たちは多くを吸収し、レベルアップしているに違いない。

 また、11月28日に行われた台湾プロ野球のドラフト会議では、義大ライノズから蕭一傑(前ソフトバンク)が指名された。日本の高校・大学を卒業した蕭一傑は、2008年に日本プロ野球のドラフト1位で阪神に入団。現在発売中の「野球太郎No.007」に掲載されている過去10年分のNPBドラフト指名選手リストに載っているのが感慨深い。ほかにも林威助(前阪神)や鄭凱文(前DeNA)、許銘傑(前オリックス)らが指名された背景には、貪欲に日本の野球を吸収し、レベルアップを図ろうとする姿勢が見える。

 アジア野球界のボーダーレス化は加速するのか。来季以降、勢いを取り戻した台湾プロ野球を追いかけても損はないだろう。(「野球太郎」編集部)

 ▼野球太郎とは イマジニア株式会社ナックルボールスタジアムが発行する野球雑誌。ドラフト関連情報とディープな記事に定評がある野球愛好家のバイブルともいってよい存在。スマートフォンマガジンとして「週刊野球太郎」(http:/yakyutaro.jp/)も配信中。現在全国書店にて『野球太郎No.007~2013ドラフト総決算&2014大展望号』が発売中。

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