松井裕樹は５０人目！“ドラ１高卒左腕”の成功例は？

[ 2013年11月29日 06:15 ]

　２０１３年１０月２４日のドラフト会議から約１カ月。５球団競合のすえ楽天が交渉権を獲得した桐光学園の松井裕樹。即戦力左腕としてプロでの活躍が期待されているのはご存知の通りだ。現在発売中の『野球太郎Ｎｏ．００７』（イマジニア株式会社ナックルボールスタジアム発行）では、前号に引き続き松井についての特集記事を掲載している。そんな、松井だが、ふと気になって調べてみると、「ドラフト１位高校生左腕」というくくりでは、入団すればちょうど５０人目となることが分かった。並べてみると、そうそうたる顔ぶれだ。そこで、この記事ではドラフト１位高校生左腕から印象深い投手たちをピックアップしてみた。

◎唯一の２００勝投手は優勝請負人・江夏豊
　１９６６年第一次ドラフト会議で１位指名を受け大阪学院高校から阪神に入団した江夏豊。その後、南海、広島、日本ハム、西武と渡り歩き、広島、日本ハムでは抑え投手として優勝に大きく貢献。特に１９７９年、広島対近鉄との日本シリーズ第７戦の「江夏の２１球」は今でも伝説として語り継がれている。通算勝利数は２０６勝（１９３セーブ）で、ドラフト１位高校生左腕唯一の２００勝投手である。ちなみに江夏は３６歳で西武を退団すると翌１９８５年、ミルウォーキー・ブルワーズの春季キャンプに参加し、メジャーリーグを目指している。最終選考まで残るものの、結局メジャーの舞台に立つことは叶わなかった。

◎メジャーリーガー第一号のドラ１高校生左腕・石井一久
　１９９１年のドラフト会議で１位指名をうけ東京学館浦安高校からヤクルトに入団した石井一久。ヤクルトでは最多奪三振２回、最優秀防御率１回と活躍し、１９９７年にはノーヒットノーランを記録するなどヤクルトの日本一にも大きく貢献している。２００２年からはドジャースに移籍。ドラフト１位高校生左腕として初めてのメジャーリーガーとなった。その後メッツを経て２００６年から再びヤクルトに戻りＦＡで西武へ移籍、日米通算１８２勝を挙げ今季引退した。ちなみに通算勝利数では江夏に次いで第二位で、これまで１００勝以上挙げたドラ１高校生左腕は江夏と石井の二人だけである。

◎打者転向で開花した島本講平と愛甲猛
　ドラフト１位高校性左腕には打者転向組も少なくない。その代表選手といえば、１９７０年に箕島高校から南海に入団した島本講平。箕島高校時代はエースで四番として１９７０年春の選抜では全国制覇を成し遂げた。プロ入り後すぐ外野手に転向し、1年目にオールスターにも出場したが、成績は上がらず、1975年シーズン途中トレードで近鉄に移籍する。しかしこれが転機となり、近鉄では4番を打つなど活躍し、１９７９年１９８０年のパ・リーグ連覇も経験している。
　また打者転向組のなかで最も成績を残した選手といえば、１９８０年ドラフト１位で横浜高校からロッテに入団した愛甲猛だろう。同年の夏の甲子園の決勝で早稲田実業の荒木大輔（同年ヤクルト1位指名）と投げ合い、優勝投手となって脚光を浴びた。しかし入団後、投手として芽が出ず、4年目に打者に転向してから一気に開花。１０００本安打を記録し１９８９年に一塁手でゴールデングラブ賞を受賞するなど活躍した。

◎巨人のエースは幻のドラフト１位高校生左腕
　ひとり忘れてはいけない選手がいる。２０００年にオリックスからドラフト１位指名を受けた内海哲也（敦賀気比）だ。内海はこの年オリックス入団を拒否、東京ガスへ進み、三年後の２００３年にドラフト（自由獲得枠）で巨人へ入団。一昨年昨年と連続で最多勝を獲得し、通算勝利数は現在１０８勝、いまや巨人のエースであり、セ・リーグを代表する左腕投手となった。ちなみに現役ドラフト１位高校生左腕の中でもっとも勝ち星を挙げているのは、ヤクルトの村中恭兵（２００５年ドラフト１位）で３７勝。幻のドラフト１位高校生左腕が圧倒的な成績を挙げているとはなんとも皮肉なものである。

　松井裕樹の場合、実力はすでに折り紙付きという評価ゆえ、活躍の時期や内容にもこだわりたい。一方「ドラフト１位高校生左腕」の勝敗記録だけ見ると、０勝のまま引退した選手が１３名、１０勝未満の選手を含めると約２０名というなかなか厳しい現実もある。

　これから彼に、どんなドラマを待ち構えているのか。松井裕樹から新たな伝説が生まれることを期待しながら、今後の活躍を見守り続けたい。（『野球太郎』編集部）

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