マー君印象深いのはリーグV決めた「田中の8球」

[ 2013年11月29日 05:30 ]

インタビューで笑顔を見せる田中(中央)と嶋(左はTBS・高畑百合子アナウンサー)

 楽天の田中将大投手(25)が28日、都内で行われた「毎日スポーツ人賞2013」(スポーツニッポン新聞社共催)の贈賞式に出席。グランプリに輝いた右腕は、9月26日の西武戦(西武ドーム)でリーグ優勝を決めた瞬間の「8球連続ストレート勝負」を振り返った。また、特別賞は「東北楽天ゴールデンイーグルス」が選ばれ、嶋基宏捕手(28)がチームを代表して賞状、ブロンズ像などを受け取った。この模様は、来年1月にBS―TBSで放送される。

 会場が笑いに包まれた。連日の表彰式ながら、疲れも見せず記念撮影に応じていた田中がカメラマンに「もっとうれしそうな表情でお願いします」とリクエストされた時だ。「だったら、もっとうれしそうな顔で撮ってください」。和やかなムードで贈賞式を終えた。

 開幕から無傷の24連勝を飾り、チームを初の日本一に導いた絶対エース。最も印象に残る場面を聞かれると「リーグ優勝を決めたマウンド」と答えた。9月26日の西武戦。1点リードの9回に救援で登板したが、いきなり1死二、三塁と逆転サヨナラ負けのピンチを迎えた。しかし、栗山を3球連続直球で見逃し三振、浅村にも5球連続直球を投じ、最後は153キロで空振り三振。永遠に語り継がれるであろう「田中の8球」は、東日本大震災から復興を目指す東北に勇気を与えた。

 その秘話を明かした。栗山への初球を投じる前に、捕手・嶋のサインに首を振った。変化球も含め何度か送られるサイン。「外角直球にうなずいたら、嶋さんも“田中はここに投げたいんだな”と感じてくれた」。バッテリーの考えは一致した。その後は「あうんの呼吸」。武器であるスプリットは1球もない。8球全てが外角直球。プロ入りから練習を繰り返してきた田中の原点だった。

 マジック2で迎えた一戦。9回の西武の攻撃が始まる直前に2位・ロッテが日本ハムに敗れた。星野監督は田中の登板条件を「1イニングを抑えれば優勝が決まる時だけ」としていたが、実は右腕はマウンドに向かう時点でロッテの敗戦は知らなかったという。「ロッテの試合が終わってなかったけど“田中、行くぞ”となった」。すると、投球練習後に佐藤投手コーチが耳元でささやいた。「日本ハムが勝った。抑えれば優勝だ」。ドラマのようなシナリオ。「本当にあの日は出来過ぎでした」と振り返った。

 田中の向上心や探求心が衰えることはない。「山登りで言えば何合目か?」との問いには「見えない頂上を目指してずっとやっていく。(野球を)やめる時が頂上」と言う。今オフにメジャーに挑戦する可能性もあるが、舞台がどこでも野球に取り組む姿勢に変わりはない。まさに「野球人」。夢を与え続ける。

 ▽田中のリーグ優勝VTR マジック2で迎えた9月26日の西武戦(西武ドーム)、4―3の9回に今季初の救援登板。マウンドに向かう直前、マジック対象チームのロッテが札幌ドームで日本ハムに敗れた。田中は内野安打と四球、犠打で1死二、三塁と逆転サヨナラ負けのピンチを招いたが、3番・栗山、4番・浅村を連続三振。楽天を初のリーグ制覇に導いた。

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2013年11月29日のニュース