MLBポスティング議論暗礁 日本側返答遅れで“増えてしまった時間”

[ 2013年11月16日 05:30 ]

 大リーグ機構が入札制度を修正する決断に至ったのは、14日に最終日を迎えたオーナー会議で意見が分裂したことが影響した。同制度をめぐる「金欠球団」VS「金満球団」という図式。ニューヨーク・ポスト紙によると、発端はパイレーツのフランク・クーネリー球団社長の異議申し立てだ。

 「田中の獲得は高額すぎて競争に加われない」。今季開幕時に30球団中26位の総年俸8005万5000ドル(約80億円)だった市場規模の小さい街を拠点とする球団代表として制度を批判。入札金額高騰を抑えるため、修正案として規定額を超過した場合にぜいたく税が課される年俸総額へ入札に要した額を組み込むことを提案したのだ。

 この発言にヤンキースのランディ・レバイン球団社長が激高。「キューバ選手と契約する際は、そんな論争は起こらなかった」とまくし立てた。ヤ軍の開幕時の総年俸は2億3346万4061ドル(約233億円)で1位。今季は先発陣が不調でプレーオフ進出すら逃した。今オフの補強で是が非でも田中を獲得したい事情がある。ぜいたく税の制度が導入された03年から唯一10年連続で支払っており、同税の対象とならない入札制度はヤ軍の「切り札」といえる。

 大リーグ機構と選手会の労使協定には、入札額をぜいたく税の対象にしないことで合意され、マンフレッドCOOも各首脳に「期限が切れる16年まで、選手会から議論に応じないと回答を受けた」と話したという。そのため、修正案がどうなるかは不透明だ。

 選手会が反発したことで対応が遅れた日本側だけではなく、米球界も一枚岩ではなかった。日本選手の獲得に高額な資金が必要な現実を問題視する向きは多く、ロサンゼルス・タイムズ紙(電子版)は「多くのオーナーが入札制度自体の廃止を願っている」と報じている。

 ▼ポスティング・システム(入札制度) 大リーグに移籍する際、選手との交渉権を入札により決定する制度。選手の所属球団が容認すれば、海外フリーエージェント権を持たなくても移籍が可能となる。獲得希望球団による最高入札額を日本の所属球団が受諾すれば、30日間の独占交渉権が発生。97年オフに伊良部秀輝(当時ロッテ)が強引にヤンキースと契約した経緯から、日本選手獲得の機会均等を求めた大リーグ機構側の要望もあり、98年に日米間選手契約に関する協定で定められた。日本選手の第1号は00年11月に申請したイチロー(オリックス)で、マリナーズが1312万5000ドル(約14億1800万円=レートは当時)で落札。

 ▽ぜいたく税(課徴金) 年俸総額が一定の上限を超えた球団がペナルティーとして支払う。03年に導入された。金額は超過回数が多いほど上がり、大リーグ機構に納められた後、年俸総額の低い球団に分配される。上限は毎年変動し、14年オフの上限は1億8900万ドル(約189億円)。

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2013年11月16日のニュース