マー君 今オフメジャー移籍消滅も 急転、新ポスティング白紙

[ 2013年11月16日 05:30 ]

田中(左)は星野監督に呼び止められ外野で話す

 楽天・田中将大投手(25)の大リーグ移籍が消滅する可能性が出てきた。大リーグ機構(MLB)は14日(日本時間15日)、日米間で合意に達していたポスティング・システム(入札制度)の新制度を取り下げ、修正案を提出すると発表した。修正案の作成には数週間が想定されており、成立時期は早くても12月以降で、長期化は避けられない情勢。ポスティング・システム自体が今オフを含めて今後、撤廃される可能性もあり、同制度を利用して今オフの移籍を目指していた田中の動向は極めて不透明となってきた。

 事態は急転した。この日に行われたオーナー会議後の会見。ロブ・マンフレッドCOO(最高執行責任者)の発言は日本側にとって予想もしない内容だった。「日本の総意が出るのに時間がかかりすぎて、情勢は変わった」。ポスティング・システムの新制度を取り下げて修正案を提出すると発表したのだ。

 新制度では、旧制度で最高入札額を得ていた日本の球団が、最高額と2番目の間となる金額を得る点などが変更された。しかし、複数球団との交渉は実現せず、労組・日本プロ野球選手会が1日に「メリットがない」と異議を唱えて合意発表は先延ばしになった。ようやく14日に2年間限定、同時に現在9年となっている海外FA権の取得期間短縮を求めるとの条件付きで受諾すると表明した。あとは12球団側が18日の実行委員会で協議した上で承認し、正式発表となる運びだった。それが一転、「白紙」に戻った。

 そればかりか、米国側は今オフを含めた今後の入札制度自体を撤廃する可能性にまで言及した。マンフレッドCOOは「われわれにとって、この(ポスティングがない)状況は受け入れられる。選手たちは定められた時間がたてばFAになって、こっちでプレーすることができるのだから」。田中への最高入札額は1億ドル(約100億円)を超えるとも推測される現状で、入札金額の高騰抑制を望むMLBのキム・アング副社長も「(入札制度撤廃は)ブラフではない」と断じた。入札制度がなければ、田中の米国移籍は海外FA権を取得する15年オフまで閉ざされることになる。

 日本野球機構(NPB)の井原敦事務局長によれば、14日に選手会が承認したことを報告した後でMLBから「状況は変わった」との旨が電話とメールで通達されたという。日米間で明確なデッドラインはなかったが、11月中旬になっても合意できなかったことで、オフの予算繰りに影響が出るMLBの各球団に焦りが生じていた。

 井原事務局長はこの日、「あくまで結果論だが、(選手会が待ったをかけた)影響はあったと思う。再度成立に向けて努力する」と話した。NPBの選手関係委員会の四藤慶一郎委員長(阪神球団専務)も「困ったことになった。また長引くな…」と困惑を隠せない。

 米国側は修正案の作成には数週間以上かかるといい、さらに日本側に不利な条件が提示される可能性がある。成立時期は早くても12月以降。日本のある関係者は「(運用開始には)年を越すだろう」と見ている。越年となれば今オフの大リーグ球団の補強は進み、田中が入札制度で移籍する場合に大きなマイナス要素となる。報道陣から質問を受けた田中は無言を貫いたが、日米間の交渉のもつれから苦境に立たされた。

 ▼労組・日本プロ野球選手会松原徹事務局長 MLBからもNPBからも連絡を受けていないのでコメントできない。

 ▼同・嶋基宏会長(楽天) 僕のところに連絡が何も来ていないので、申し訳ないがコメントすることができません。

 ≪ポスティング・システムの経緯≫

 ▼12年6月 従来の制度では入札額の高騰を招くとして、米国側が「日米間選手契約に関する協定」の破棄を通告。

 ▼10月 NPB12球団が実行委員会で新制度案を決議し、MLB側に提示。

 ▼13年8月 前年に同制度が失効していたことが表面化。

 ▼10月末 新システムの内容が決定。日本球団が獲得する金額は入札額1位と2位の中間とし、破談の場合は米国側の入札球団に罰金を科すことでほぼ合意。

 ▼11月1日 選手会がNPBに対し「新協定にメリットはない」と締結しないよう文書で申請。交渉過程などで日米間に不平等が生じていると主張。

 ▼同5日 NPBがMLBに対し、新協定の締結の延期を要請。

 ▼同11日 NPBと選手会の事務折衝が行われ、新制度の導入を反対していた選手会側が軟化。

 ▼同14日 選手会が新制度について条件付きでの導入を了承。2年間の限定に加え、海外FA権の短縮を求めた。

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