侍ジャパン 安定収入確保へ中長期的営業戦略で脱“丸投げ”

[ 2013年11月7日 06:10 ]

連載・始動 小久保ジャパン(中)

(11月5日)
 日本野球機構(NPB)には一般企業なら柱である営業部がない。「スポンサー候補に足を運ばせる殿様商売」と揶揄(やゆ)する関係者もいた。収入は球宴と日本シリーズ事業と12球団の「年会費」が頼み。日米野球などオフの事業は単発で、「買い切り」と呼ばれる権利の丸投げが常だった。

 そんなNPBの金銭感覚を不安視し、冷や水を浴びせたのが、昨年7月20日の労組・日本プロ野球選手会の新井貴浩会長(当時=阪神)によるWBC不参加表明だった。選手会は営業的マインドを持たないNPBに対し、大リーグ機構(MLB)から利権を奪い返してくることを要求。WBCの日本に対する不平等な利益配分の是正を求める一方で、選手会は「5年後、10年後」を見据え、侍ジャパンについてNPBと労使折衝を重ねた。

 両者の意見は「侍ジャパンに必要なのはWBCなどの単発の大会で得る臨時収入ではなく、長期のスポンサー契約料であり、グッズ収入」で一致する。選手会は、侍ジャパンにかかわる「事業部局」をNPBが立ち上げ、12球団が全面協力することを条件に、WBCの不参加決議を撤回した。

 NPB側は「4年単位でスポンサーを募り、グッズ販売、さらに春秋の2度国際試合を開催し、そのテレビ放映権などで4年総額40億円を超える収入を見込める」と試算。問題は、それを誰が実行できるのかであった。

 侍ジャパン事業委員会の島田利正委員長(日本ハム球団代表)らが人選を進め、元ロッテの球団執行役員事業本部長で株式会社スポーツマーケティングラボラトリーを主宰する荒木重雄氏、DeNAの球団事業本部長を務めていた前沢賢氏を事業戦略担当として招へいした。ある関係者は「2人の加入で風向きが変わった」と証言する。マーケティングの視点から球団運営を知る2人がまず着手したのは、侍ジャパン事業を中長期的に展開するためのグランドデザインだった。

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2013年11月7日のニュース