サイ・ヤング賞最終候補にダル&岩隈!シャーザー本命も快挙ある?

[ 2013年11月7日 06:00 ]

サイ・ヤング賞候補となったレンジャーズのダルビッシュ

 大リーグは5日(日本時間6日)、今季のサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)の候補3選手を発表。ア・リーグはレンジャーズのダルビッシュ有投手(27)とマリナーズの岩隈久志投手(32)が名を連ねた。13日午後6時(日本時間14日午前8時)に発表されるが、本命は今季リーグ最多の21勝を挙げたタイガースのマックス・シャーザー投手(29)。しかし、13勝のダルビッシュ、14勝の岩隈の投球内容も高く評価されており、日本投手初となる快挙に向け、受賞の可能性を探った。

 勝利数リーグ8位タイの岩隈、同15位タイのダルビッシュが「3強」に選ばれたのには理由がある。記者投票で同賞を選出する大リーグは、日本プロ野球の沢村賞と違い、選考基準が各記者に委ねられており、彼らの中で「最高の投手」の評価基準が、近年変わりつつあるのだ。

 ダルビッシュに関しては、奪三振王の他にも被打率・194がリーグトップ。最も打ちにくい投手であることを示している。今年投票した30人のうちの一人である「ヤフー!スポーツ」のジェフ・パッサン記者は「被打率と奪三振数は、相手打線を圧倒していた証拠。私にとって、そこがサイ・ヤング賞選考の決め手なんだ」と説明した。

 ある程度の勝利数はもちろん必要だが、絶対の評価基準ではない。勝ち星は味方打線の援護や、救援陣の能力に大きく左右される。それよりも相手打線をどれだけ抑えたか、長いイニングを投げたかなどの数字を重視する傾向が高まっている。

 大きな転機は10年。13勝12敗だったマリナーズのヘルナンデスが、19勝6敗のレイズ・プライス、21勝7敗のヤンキース・サバシアを抑えて選ばれた。投票者28人中、21人が1位票を投じた。防御率、イニング数、WHIP、奪三振数でライバルを上回ったからだ。

 05年はエンゼルスのコローンが21勝8敗、防御率3・48、WHIP1・12、投球回222回2/3で選出された。一方、ツインズのサンタナは、16勝7敗、防御率2・87、WHIP0・97、投球回231回2/3で3位。BBWAA(全米野球記者協会)の新代表で、当時からツインズ担当のラベル・ニール記者は「今なら絶対にサンタナが選ばれるだろう」と断言した。 岩隈については、ノンフィクション「マネー・ボール」で有名になったデータ分析「セイバーメトリクス」の数値の一つ「WAR」がポイントだ。メジャー最低年俸レベルの選手に比べ、どれだけ勝利数を上積みできたかを表すもので、岩隈はこの「WAR」がリーグ1位の7・0。2位はホワイトソックスのセールで6・9、シャーザーは3位の6・7である。

 算出基準は、投手がどれだけ失点を防ぐことができたか。まず、並の投手がマリナーズで投げた場合の失点をはじき出し、岩隈の失点数と比べる。データ上、マ軍の今季の守備力はリーグ最低レベル。にもかかわらず、リーグ3位の219回2/3を投げ、防御率も3位の2・66というのは、岩隈の投球が優れていた証拠――ということになる。

 「WAR」が選出の参考にされる傾向は年々強まっており、過去10年のア・リーグで7人のサイ・ヤング賞受賞者が、同データのリーグ1位だった。

 全国紙「USAトゥデー」のポール・ホワイト記者は「変化は、必然的なものだ。00年以降、メジャー球団はセイバーメトリクスを重視して選手を評価し、成果を上げてきた。スポーツメディアのサイトもデータが年々充実しており、それを使わない手はない」と説明した。

 日本投手の過去最高位は4位(95、96年ドジャース野茂、08年レッドソックス松坂)。95年に新人王と奪三振王に輝いた野茂も、18勝を挙げた松坂も「3強」に食い込むことはできなかった。それが同一年で2人。シャーザーの本命は揺るがないが、過去に例がないほどダルビッシュと岩隈の両右腕が高く評価されたシーズンだったことは間違いない。

 ▽WAR(Wins Above Replacement)同一ポジションの代替可能選手に比べ、どれだけ勝利数を上積みできたかを示す指標。代替可能選手とは3Aとメジャーを行き来するレベルの選手でWARは0。平均的な先発投手のWARは2・0とされる。算出方法は極めて複雑な上に、複数あるが大手データサイト「ベースボール・レファレンス」版と「ファングラフス」版の2種類が多く用いられており、本紙は前者のデータを使用。

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