星野楽天 日本シリーズ初進出 キッパリ「巨人やっつけます」

[ 2013年10月22日 06:00 ]

<楽・ロ>球団初の日本シリーズ進出を決め、胴上げされる星野監督

パ・リーグCSファイナルステージ第4戦 楽天8―5ロッテ

(10月21日 Kスタ宮城)
 闘将が泣いた。楽天は21日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦でロッテを8―5で下し、球団創設9年目で初の日本シリーズ進出を決めた。本拠のKスタ宮城で7度宙に舞った星野仙一監督(66)は目を潤ませ、万感の思いを募らせた。3点リードの9回に田中将大投手(24)を投入して逃げ切る采配。26日に開幕する日本シリーズでは、現役時代から闘志を燃やし続けてきた巨人と対戦し、球団、そして自身初の日本一を目指す。

 本拠地での初めての胴上げ。9月26日にリーグ優勝を決めた西武ドームと同じ7度、宙に舞った。楽天の歴史に新たな一ページを加えた星野監督の目は潤んでいた。

 「必ずクリネックス(Kスタ宮城)で、ファンみんなの前で胴上げしてもらいたいと、選手と約束していた。本当に幸せな男だな、僕は…。息子たちが前向きにやってくれた」

 約束の胴上げ。11年3月11日。東日本大震災で日常の風景は一変した。Kスタ宮城も柱に大小無数のひびが入り、配水管が破裂して水が滝のように落ちた。客席の一部は陥没した。だからこそ、本拠地の仙台で、ファンに、被災者に歓喜の胴上げをどうしても見せたかった。

 試合後の穏やかな表情とは対照的に、その采配は熱く、激しかった。1点勝ち越した直後の8回。第2戦で9回1失点と好投した新人・則本を中2日、そして9回には田中を中3日でマウンドに送った。「やぶれかぶれだよ。せっかくリードしているんだから、このまま勝たないと駄目だ」。そう話したが、この日で決着がつかなければ、田中は22日の第5戦、則本は23日の第6戦の先発予定。大きなリスクを背にした継投だった。

 リーグ優勝を決めた9月26日の西武戦でも1点リードの9回に田中を救援起用したが、その時は今季の貢献への「ご褒美」としての胴上げ投手だった。だが、今回は事情が違う。佐藤投手コーチが「うちはそれしかないから」と言うように、ラズナーの戦線離脱などで救援に不安を抱えるチームにとって「抑え・田中」は戦略上の切り札だった。中日、阪神監督時代に計3度のリーグ制覇を成し遂げたが、日本一は達成できなかった。日本代表を率いた北京五輪は4位に終わりメダルを逃した。短期決戦では勝てない――。そんな負の歴史を断つようなタクトだった。

 「私の永遠のライバル・ジャイアンツを、しっかり胸を借り、頭を下げて、やっつけます!!」

 日本シリーズの相手は巨人。現役時代は王、長嶋を擁した黄金期の巨人にライバル心をむき出しにし、74年には中日のエースとして沢村賞に輝きV9で止めた。阪神シニアディレクター時代の05年には、渡辺恒雄球団会長から巨人監督への就任を要請された。68年ドラフトで指名されることはなかったが、プロ入り前は巨人入団を夢見ていただけに、悩みに悩んだ。そして「オレはアンチジャイアンツで生きてきた男」と最終的に固辞。その巨人と覇権を争う。

 「きょうの胴上げは下手。AJ(ジョーンズ)が下にいたからかな。もう一回、気持ちいい胴上げをしてもらいたい」

 就任3年。怒って、叱咤(しった)し、少しだけほめてつくったチーム。日本一の舞いを今なら託せる。たくましくなった息子たちが、指揮官にそう確信させていた。

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