バレ シンヤさんに贈る60号「日本で成功するすべを教えてもらった」

[ 2013年10月5日 06:00 ]

<ヤ・神>6回2死三塁、バレンティンは右越えに60号となる2ランを放ちガッツポーズ

セ・リーグ ヤクルト2-3阪神

(10月4日 神宮)
 ファンのため、チームのため、そして一人の男のために、こん身の力を込めて振った。満員の神宮球場。大歓声が誰に注がれているか、ヤクルトのバレンティンは知っている。だから打ちたかった。

 6回2死三塁。ベンチから、いつものように鋭い眼光が打席の自分に向けられる。現役最後の試合となった宮本だ。極限まで集中し、苦手としてた阪神・メッセンジャーの2球目。コースは外角ギリギリだったが、高さは甘い。145キロ直球。迷わず踏み込んで完璧なスイングで叩いた。打球は右翼席へ。弾丸ライナーのアーチが、グラウンドを去る偉大な選手へ最高の贈り物となった。

 日本で初めて60号の金字塔を打ち立てたことよりも、宮本への思いが大きかった。「シンヤさんのためにもホームランを打つことができてよかった」。9月30日以来の一発に「きょうまで取っておいたよ」と笑った。来日から3年連続の本塁打王が確実なバレンティンに、常に厳しい言葉をかけてくれたのが宮本だった。全力疾走を怠って何度怒られたか分からない。何日も口を利いてくれないこともあった。でも、それはチームの勝利を願い、自分のことを思ってくれているからだと分かっている。「日本で成功するすべを教えてもらった」。一塁ベンチへ戻ると、宮本と抱き合った。

 特別な一日の特別な一発。ついに伝説の大打者ベーブ・ルースに肩を並べた。1927年に放ったシーズン60本。ホームラン打者なら誰もが目標とする数字を「今までの集大成」と位置づけて「米国ではNo・1だと思っている強打者に並べて光栄だと思う」と感慨深げに言った。9月15日に新記録の56、57号を連発して以降は量産ペースが大幅ダウン。集中力を欠く打席も目立ったが、この日ばかりは違った。引退セレモニーの直後、大記録を後押ししてくれた恩人を再び抱きしめた。

 残り2試合。打率は3厘差、打点は6差でトップのDeNA・ブランコを追うが、逆転3冠王は厳しい状況だ。ただ、宮本へ贈った引退プレゼントの60号をバレンティンは一生忘れない。

 ≪日本では初の大台≫バレンティン(ヤ)が自己の持つプロ野球記録を更新する60号2ラン。シーズン60本以上は大リーグでは延べ8人が記録しているが、日本では初の大台となった。バレンティンはチーム142試合目での到達。大リーグでも142試合以内での60号は01年ボンズ141試合目(最終73本)、98年マグワイア142試合目(同70本)と2人だけだ。なお、本塁打したメッセンジャーとは今季直前まで19打席対戦し、17打数1安打(2四球)で打点0。20打席目での初アーチとなった。これで今季バレンティンが本塁打した投手は48人目。神宮では38本目といずれも自身の最多記録を伸ばした。

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