前田智 涙で見えなかった?空振り三振「クルッと回って終わりですわ」

[ 2013年10月3日 06:00 ]

<広・神>阪神・水谷打撃コーチ(左)にあいさつし、涙を流す前田智

セ・リーグ 広島7-2阪神

(10月2日 マツダ)
 どよめき、歓声、手拍子、そして前田コール。7―2で迎えた7回1死一塁、広島・前田智が代打で登場した。引退試合はきょう3日中日戦。出場予定はなかった。予想外の展開。マツダスタジアムに集まった3万を超える観衆は歓喜した。前田智は涙があふれそうになったのか、目をしばたたかせながらバットを構えた。

 「涙?いやいや、144、143キロが見えないので。全く反応できず、最後はフォークがピュッと落ちてクルッと回って終わりですわ」。左手に死球を受けた4月23日ヤクルト戦(神宮)以来の打席。玉置の直球を2球見逃し、3球目のフォークに空振り三振した。それでもカープファンは、その勇姿に酔いしれた。

 「こういう展開だったので。あす(引退試合)もあるので併殺を打って走り、ピリっとこなくてよかった」。前日、緒方打撃コーチからの出場の打診を固辞。だが、点差がついたことでバットを握った。それも、好調な打線のおかげだ。2回に木村が3年ぶりの本塁打となる先制2ランを放つなど、CSファーストステージを戦う阪神に11安打7得点で快勝した。

 試合前だった。練習を終えた前田智は阪神べンチを訪問し、入団1年目の90年から指導を受けた水谷打撃コーチにあいさつ。ねぎらいの言葉を掛けられ、大粒の涙がこぼれた。「厳しかったなという印象。江藤さん(現巨人打撃コーチ)と2人、よく鍛えてもらった。感謝の気持ちを伝えました。(涙は)寂しい気持ちもあって…」。努力あっての天才。納得するまでバットを振り続けた。だから師匠の水谷コーチは弟子の24年間の現役生活を「人間でゆうたら100(歳)を超えてる。悔いはないやろ」と独特の言い回しで表現した。

 借金1とし、残り2試合。2位・阪神とのゲーム差も2・5に縮めた。球団初のCS進出を決めているが、勝率5割以上で出場したい。3日の引退試合。前田智は「あすもこんな展開を祈っています」と言った。

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