51号のバレ 球団初の3冠王も視野 8月は月間新17発

[ 2013年8月29日 06:00 ]

<ヤ・中>9回1死、左越えソロを放つヤクルト・バレンティン

セ・リーグ ヤクルト7-11中日

(8月28日 神宮)
 試合は決していても観客は帰ろうとはしない。もう一つの楽しみは、球史を塗り替えるヤクルト・バレンティンの一発だ。そして、その期待に応えた。

 8月17本目、今季51発目は6―11の9回1死から飛び出した。岡田が2ボールとしたところで球場中が大ブーイング。その異様な空気の中でも背番号4だけは冷静に神経を研ぎ澄ませていた。真ん中高め122キロのスライダーを「打った瞬間、真上に上がった感じがした」と振り返ったほどバットでこすり上げた。高々と上がった打球はそのまま左翼席最前列へ着弾。「バックスピンがかかってよく伸びてくれた」と自画自賛した。

 強烈なバックスピンをかけるイメージは、実は打撃練習以外で養っている。それが打撃練習前にケージ横で行うフライを打ち上げる練習だ。本人は「ただの遊びだよ」と笑うが、試合用のバットで捕手や内野に何度もフライを打ち上げる。この日の弾道はこの「遊び」が生きた、まさにイメージ通りの一発だった。

 月間のプロ野球記録を更新する17本目のアーチ。「個人の記録としては満足している。好不調の波がなく打てたのがよかった」。年間55本塁打のプロ野球記録にもあと4本。この日で本塁打だけでなく打率もトップに立って、球団初の3冠王も視野に入ってきた。

 ついに「イチメーター」ならぬ愛称からとった「ココメーター」も右翼席に出現した。ローズが55本塁打をマークした01年に近鉄でヘッドコーチをしていた伊勢ヒッティングコーディネーターは「ローズは記録を更新したくてウズウズしていた。でも、バレンティンはあっさりいきそうやな」と両者を比較する。本人も「投手は簡単にストライクを投げてこない。でも、その中で失投が来るかもしれないと打てるボールだけを待つようにしている。重圧はないよ」と言い切る。

 1964年に王貞治が樹立してから01年ローズ、02年カブレラが越えられなかった55本の壁。その壁を越えようとしている男は、どこまでも冷静に本塁打を積み重ねている。

 ≪大リーグ記録は月間20発≫バレンティン(ヤ)が今月17本目となる51号。月間17本塁打は門田(南海=81年7月)、江藤(広=94年8月)、阿部(巨=04年4月)の各16本を上回るプロ野球新記録になった。なお、大リーグの月間最多本塁打はサミー・ソーサ(カブス=98年6月)の20本。また、シーズン51本以上は8人目(10度目)。チーム112試合での51号は02年カブレラ(西)の119試合を抜く最速到達で、現在のペースなら最終66号まで届く計算になる。

 ≪打率もトップ浮上≫バレンティンはルナ(中)が規定打席到達者から消えたため、打率も・339でトップに浮上。過去、シーズン50本塁打以上の首位打者は、73年王(巨)、85、86年落合(ロ)、85年バース(神)といずれも3冠王の3選手が記録しているが、バレンティンはどうか。

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