イチローと一問一答「ネガティブなことが見つからない」

[ 2013年8月23日 06:00 ]

<ヤンキース・ブルージェイズ>試合後に行われた記者会見で4000本安打への思いを語るイチロー

ア・リーグ ヤンキース4―2ブルージェイズ

(8月21日 ニューヨーク)
 【ヤンキース・イチローと一問一答】

 ――1打席目で達成。
 「1打席目が一番きれいだなと思っていた。また、ややこしいピッチャーですから。元チームメートなんですけど、ややこしかったですよ」

 ――きれいな安打。
 「どんなヒットも僕らしくなるとは思っていた。左翼へのホームラン以外は」

 ――記録の価値をどう考えるか。
 「将来、死ぬ前に何となく悟り、死んでいくものだと思う。自分では成長したかどうかは分からない。そうなると信じてこれからもプレーしていきたい」

 ――この日を迎えるにあたっての気持ちは。
 「まず最近の一日、球場に来てからはラインアップがどうなっているのか。(今季は打順が下位が多く)ラインアップカードを下から見る癖がついている。きょうもゲームに出られるかどうか、先発としてか分からない。安定した気持ちの中で来ることはできない。自分の名前があったときに、スイッチを入れる。なかなか難しい時間を過ごしている」

 ――走と守のレベルを保ちながらの戦い。
 「学生時代から、プロ野球選手は、打つこと、走ること、守ること、考えること、全部できる人がなるものだと思っていた。でも実はそういう世界ではなかったというだけのこと。それが際だって見えることがちょっとおかしいと思います」

 ――普通のことを長く保てる人が少ない。
 「だから年齢に対する偏った見方が生まれてきたのでしょうね。偏った見方をしてしまう頭を持っている人に対して、お気の毒だなと思うことはあります」

 ――ヤ軍では各部門で記録保持者が多い。
 「ヤンキースに来て数字のこととかどうでもよくなるんですよ。ジーターがショートにいて、マリアノ(リベラ)が最後を締める。そこに入った時に、全体の絵としてきれいに収まるかどうかが大事。数字よりも、そういう要素の方が僕にとっては大切」

 ――過去の自分との違いを感じることは。
 「昔できたことが今できない、ということが見当たらない。昔、考えなかったことを考えるようになったということは、あると思います。過去の自分と、現在の自分を、客観的に見てどうなのかということは大切なことだと思う。ただ、そういう目を持ちながらも、ネガティブなことが見つからない。まあちょっと白髪は増えましたけど。紅白歌合戦では演歌の方が良くなってきたとかというのはありますけど、疲れやすくなったとか、足が遅くなったとか、肩が弱くなったとか、今のところない」

 ――年齢の固定概念に対して。
 「僕が使っている野球の道具は最高のもの。僕がしているトレーニングも、何十年も前の人たちのそれと比べた時に、考えられないようなもの。それを続けている僕が、ある年齢になるとこうなっているだろう、ああなっていてほしいという考えがそこに垣間見えるのは嫌。(意識を変えることは)僕たちの大きな使命だと思う」

 ――諦めるという発想はないのか。
 「ちょっとややこしい言い方になりますけど、諦められないんですよ。いろんなことを。諦められないという自分がいることを諦める、ということですかねえ」

 ――20年で4000安打。シーズン200本ペースで、5000本は。
 「このペースも僕の中ではちょっと遅いですよね。もうちょっと早くできた。日本でも最後、20試合以上出られない時期があったので、もったいないと思う。ただ、あす出られるかどうかはきょう決まる、みたいな日々がずっと続いているので、(先の安打記録に)フォーカスはできない」

 ――平和台球場でのプロ初安打とヤンキースタジアムでの4000本との違いは。
 「1本目のヒットは、実は、当時のマネジャーから寮の部屋の内線で電話があって、あすから1軍に行けと言われて、お断りした。“2軍でやらなきゃいけないことがあるので、お断りできないですか。土井(正三)監督にお伝えください”と言ったら、従ってくれと。嫌々打った1本目。4000本目は、試合に出たくて出たくてしょうがない中で打ったヒット。面白さはありますね」

 ――平和台ではほとんど拍手も湧かなかった。
 「湧くわけないじゃないですか。味方のベンチだって。18歳の小僧がね。7月に1軍に来て、ヒットなんてうれしくないでしょ、きっと。だから3年は、という思いがあった。何で3年かというと、4年後には、同じ年で、同い年の大学卒業の選手が入ってくるので、3年間で自分をきっちりつくって、4年目にレギュラーを取ってというプラン。5年目では遅い。高校卒業のドラフト4位でしたけど、そういうプランがありました」

 ――今、満足感は。
 「物凄く満足している。僕は満足を重ねないと、次は生まれないと思っている。小さなことでも満足するし達成感も時には感じる。こんなことで満足してはいけない、まだまだだと言い聞かせている人は、しんどいですよ。うれしかったら喜べばいい」

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2013年8月23日のニュース