前橋育英 ミラクルサヨナラ 9回2死無走者から2点差はね返した

[ 2013年8月20日 06:00 ]

<前橋育英・常総学院>延長10回裏無死一、二塁、前橋育英・田村は投前に送りバントを決め自らも生きようと一塁へヘッドスライディング

第95回全国高校野球選手権準々決勝 前橋育英3―2常総学院

(8月19日 甲子園)
 奇跡の逆転劇を呼び込んだ。前橋育英(群馬)のエース高橋光成(こうな)投手(2年)が、準々決勝の常総学院(茨城)戦に0―2の6回から救援登板。延長10回までの5イニングを3安打無失点に抑え10三振を奪った。2点を追う9回2死二、三塁では、右中間を破る同点三塁打も放った。チームは10回に3番・土谷恵介内野手(3年)の中前打でサヨナラ勝ち。初の決勝進出を懸け、21日に日大山形と対戦する。

 まさに奇跡だった。敗色濃厚の土壇場から同点に追いつき、延長10回にサヨナラ勝ち。立役者はまたも高橋光だった。

 「本当にうれしいです。絶対負け られないと思った。投げて打って、3年生と一日でも長く野球がやりたいです」

 もう徳俵に足がかかっていた。9回2死走者な し。ベンチで見守 った荒井主将も 「2死になって泣いているやつもいた。主将が泣いていてはダメだと思って声を出してごまかしていましたけど」と敗戦を覚悟 した選手がいたことを明かした。5番・小川の打球は平凡な二塁へのゴロ。試合終了、と思われたが、二塁手の進藤がまさかの失策。これで流れが変わった。続く板 垣の二塁打で二、三塁 とし、打席に向かったのが高橋光だった。1ストライクからの2球目。外角低めのスライダーを逆らわずにはじき返し、右中間を破る同点の適時三塁打。「自分でも信じられなかっ た」。三塁ベース上で激 しくガッツポーズを繰り出し、喜びを爆発させた。そして延長10回に3番・土谷の中前打でサヨナラ勝ちを飾った。

 この日の先発は背番号10の喜多川だった。しかし6回。荒井直樹監督はエースの投入を決断した。「もう一回流れを持ってこようと思った。“いくぞ”という雰囲気になった」。前日までの3試合で完投し、球数は377球を数えていた。「右肘に張りがあるし、握力が落ちていた」と高橋光。8回には2死満塁 のピンチを招いたが、この日最速の145キロを投げ込み、飯田を見逃し三振。結局、6回からの5イニングを無失点に抑え、10三振を奪った。

 寮では野球漬けの生活を送っている。休養のため実家に戻るのは月に1度だけ。その日 でさえ、夕方になると父・義行さん(41)に「親父、ちょっと付き合ってくれよ」とキャッチボールの相手を頼む。この日も疲労はピークに達していたが「投げたい気持ちがあった」とベンチでうずうずしていた。

 夏休みの宿題を「いつもはため 込むが、今年は甲子園に行くから」とすでにやり終えた。苦手な作文もリポート用紙3枚書き上げた。4試合32イニングを投げわずか1失点。自責は0でいまだ防御率は0・00だ。「初出場らしく思い切りできている。優勝をちょっとは意識します」。今夏の主役に躍り出た2年 生エースは、まだ群馬に帰るつもりはない。

 ≪9回2死走者なしからの逆転勝ち≫9回2死走者なしからの逆転勝ちは、90年2回戦の山陽―葛生戦で、山陽が5安打を集中して4点を奪いサヨナラ勝ち。95年2回戦の旭川実―鹿児島商戦で、旭川実が一挙4点を奪い15―13で逆転勝ちしたケースなどがある。またセンバツでは76年の2回戦で、鉾田一のエース戸田が、9回2死から内野手の失策を皮切りに4点を失い崇徳に敗れた。

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