藤浪 首脳陣うならせた 5回満塁でマー君流ギアチェンジ

[ 2013年8月19日 06:00 ]

<神・ヤ>6回無死一塁、川端の打球が体に当たり顔をしかめる藤浪

セ・リーグ 阪神6-2ヤクルト

(8月18日 京セラD)
 阪神のドラフト1位、藤浪晋太郎投手(19)は18日、ヤクルト戦に先発し、6回2失点。ドラフト制後の高卒新人では史上7人目、セ・リーグでは1967年の阪神・江夏豊以来46年ぶりとなる9勝目(4敗)を挙げた。巨人が敗れたため、2位・阪神に自力優勝の可能性が復活。8月は無傷の3連勝となった右腕がチームを4連勝へと導き、首位・巨人に点灯していた優勝へのマジックナンバーを消滅させた。

 ピンチのたびに野手に励まされながら、藤浪が粘りの投球を続けた。6回を被安打7で2失点。9勝目をつかんだ右腕に、笑顔はなかった。

 「内容には満足していない。ブルペンとマウンドとの感覚のずれを修正できなかった。腕がちょっと横振りになっていたかも」

 自己最長の9回、132球を投げた前回登板(対中日、ナゴヤドーム)から中6日。初回は先頭から安打、犠打とわずか2球でピンチを背負い、2死後に先制された。4日の巨人戦(東京ドーム)から続けていた連続無失点は15イニングで止まった。決め球のカットボールが指にかかり過ぎ、「対相手よりも対自分になってしまった」と苦心の投球を思い返した。

 しかし、味方に逆転してもらった後は主導権を渡さなかった。「何とか粘りながらの投球ができた」と4回1死一、二塁、5回1死満塁の窮地はいずれも速球で併殺打に仕留めた。

 開幕17連勝と快進撃が続く楽天・田中と同様、藤浪も満塁で被打率はゼロ。ピンチになればなるほど力を発揮する。和田監督も「悪いといっても要所、要所は力を入れていた」と評価。かつて楽天で田中を指導した山田勝彦バッテリーコーチは「球威、制球力のギアチェンジが藤浪もできる」と共通点を挙げる。もはや、窮地ではマー君級。6月16日の直接対決(Kスタ宮城)で完敗が、「(田中)将大と投げ合い、自分に何が足りないかを感じ取っていた」(山田コーチ)と成長を促したとみる。

 甲子園の季節。藤浪にはやはり夏がよく似合う。「8月3勝」はドラフト制後の阪神の高卒新人では史上初。67年の江夏豊でさえ1勝3敗。苦しい季節で勝てるのには理由がある。シャープな外見は高校時代と、さほど変わらない。だが胸囲、尻回りは入団時に比べ、ともに1・5センチずつ厚みを増した。特に胸囲は100センチ近い。昨季まで日本ハムに所属し、ダルビッシュ(レンジャーズ)らの練習メニューを知る鎌田一生トレーナーの指導の下、練習の成果が出ている。

 「(勝てば自力優勝復活は)もちろん知っていた。巨人の試合も見ていましたから」。チームを4連勝に導き、自力優勝の可能性を復活させた右腕は、2桁10勝目に向けて「きょうは付けてもらった星。次は自分の力でつかみたい」。首位・巨人とは6・5ゲーム差ながら直接対決はまだ7試合を残す。巨人の優勝マジックを消した藤浪が、セ・リーグの灯は消さない。

 ▼阪神・中西投手コーチ(藤浪について)真っすぐが抜けていた。要所でカットボールを打ってくれたり、助けてもらった部分があった。

 ≪セでは46年ぶり3人目≫藤浪(神)が9勝目。ドラフト制以降、高卒新人の9勝以上は07年田中(楽=11勝)以来7人目。セでは66年堀内(巨=16勝)、67年江夏(神=12勝)に次ぎ46年ぶり3人目となった。これで、8月4日の巨人戦からは3連勝。今月3勝は中日の大野、岡田に並ぶ最多勝利と月間MVPのチャンスが十分ありそうだ。高卒新人の受賞は野手も含め99年7月の松坂(西)が最後。セでは87年8月の近藤(中)しかいないが、藤浪が2人目となれるか。なお、この日は大谷(日)もソフトバンク戦に登板。2人の同日登板は今回が初となった。

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