マー君 開幕10連勝 パドレス・スカウト絶賛「成功できる投手」

[ 2013年6月26日 06:00 ]

<西・楽>4回無死、栗山をフロントドアで見逃し三振に打ち取る田中

パ・リーグ 楽天11-0西武

(6月25日 西武D)
 ボール2個分。楽天・田中の投げた146キロ直球は、内角のボールゾーンからストライクゾーンへと斬り込んでいった。

 4回無死。栗山への1ボール2ストライクからの5球目。ヤンキース・黒田がメジャーで駆使する「フロントドア」の必殺球だ。見逃し三振。懐をえぐられた栗山のバットはピクリとも動かなかった。

 「あれはツーシームじゃなくて真っすぐ。(変化は)ナチュラルです。フロントドア?そんなん僕にはできませんよ」

 苦笑いしながら偶然の産物だと強調したが、ネット裏のメジャースカウトの見方は違った。「左打者にああいう投球ができるのは、メジャーでも成功できる投手の証」。そう絶賛したのはパドレスのライアン・ドリース国際スカウト。大リーグは外角のストライクゾーンが広い。だからこそ、打者に踏み込まれないためにも内角に餌をまく必要がある。変幻自在。だから田中は負けない。

 2回1死一、三塁はカーターをツーシームで遊ゴロ併殺打。3回1死三塁も得点を許さない。2試合連続完封ペースも、大量リードとあって7回を3安打無失点、93球で降板。3月のWBCで調整を早めた影響か「調子は何にも良くない」と言い続ける。この日も3奪三振で、空振りはわずかに5球。「その中で抑える楽しみもある」。開幕10連勝はパ・リーグでは05年斉藤(ソフトバンク)以来で、両リーグ一番乗りの10勝目。昨季からの連勝は14に伸びた。

 「数字は意識する部分としない部分、両方ある。でも、僕一人の力じゃない。みんなで勝ち取った勝利」。連続無失点イニングは23に伸びた。西武は通算5勝13敗、防御率4・21だった天敵。それだけに登板の際の「儀式」には念を入れた。田中はイニングのたび、マウンドに上がる際にライン手前で帽子を取って一礼。そして左足から静かにまたぐ。真摯(しんし)な姿勢を、野球の神様はちゃんと見ている。

 チームは貯金を今季最多タイの7とし、2位に浮上した。今オフにもポスティング・システムでメジャー移籍の可能性がある絶対エース。上へ、さらに上へ。田中が見ている天空は、どこまでも高い。

 ▼楽天・佐藤投手コーチ 田中は決して良くない。能力が高いから抑えている。

 ▼西武・栗山(4回の見逃し三振について)シュートスピンしたのではないか。あの打席はうまいこと打席(ストライクゾーン)を使われてしまった。

 ▽フロントドア 右投手の場合、左打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンに入る軌道を言う。外角のボールゾーンからストライクゾーンに入る「バックドア」の対義語。バックドアと比較すると、死球になる可能性があるために制球は難しいが、マスターすれば、打者には体に当たりそうな軌道で来るために対応が難しい。大リーグで通算355勝のグレグ・マダックスがフロントドアのチェンジアップを得意としていた。

 ≪セパ25人目≫田中(楽)が無傷の10連勝で両リーグ10勝一番乗り。開幕からの最多連勝記録は81年間柴(日)と05年斉藤(ソ)の15連勝だが、10連勝は09年川井(中=11連勝)以来延べ25人目で、パでは14人目になる。また、楽天の投手で両リーグ10勝一番乗りは08年岩隈に次ぎ2人目。63試合での到達は岩隈の64試合を抜くチーム最速となった。6月はこれで11年から10連勝と強く、今季は4試合3勝0敗、32イニングを自責点1で月間防御率0.28。田中は11年6月にも0.28をマークしており、月間防御率0.30未満(30イニング以上)を2度以上は村山実(神=3度)金田正一(国鉄、巨)に次ぎ2リーグ制後3人目。パでは田中が初となった。

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