選手会・松原事務局長 NPBは「全く機能していない」

[ 2013年6月25日 09:00 ]

都内の選手会事務局でインタビューに答える松原事務局長

 NPB(日本野球機構)、そして日本球界のあるべき未来の姿は――。NPBが、統一球を無断変更した問題。選手、そしてファンにとって、どれほどの影響を与えているのか。労組・日本プロ野球選手会の松原徹事務局長(56)にあらためて話を聞いた。加藤良三コミッショナー(71)に各方面から批判が集中するなど、今や社会問題ともいえる「隠し球」騒動。その出口はどこにあるのか。

 ――統一球変更の隠蔽(いんぺい)。今や社会問題ともなっている。

 「12球団もコミッショナーも知らなかったとなれば、そのセンスを疑う。NPBの構造体制、システムの問題。一体決めるのは誰なのか?誰が野球界のことを考えて動くのか?と思う」

 ――加藤コミッショナーは「不祥事ではない」と言っているが。

 「本当に知らなかったらしいが、最高責任者は“知らなかった”で済まされない。何より、会見でのファンへの伝え方が…。世間へ向けての対応がお粗末。危機管理が足りないとしか思えない」

 ――そもそも今回の一件は、NPBと選手会との事務折衝の席で明らかになった。

 「なぜ黙っていたのか、と思う。こちらも遠慮していたのかもしれないが…。“議論しましょう”と言っても、これまで話し合いの機会すらなかった。パートナーであるファン、選手を完全に忘れ、無視している。なぜパートナーに相談しないのか。ボールが飛ばなくなって、バットを置いた選手だって現実的にいるはず。今は(NPBは)全く機能していない」

 ――加藤コミッショナーは辞任すべき、との声も多いが。

 「選手会が前に出て“わっ”と言えば効果は高いと思う。ただ、そこをやる(追及する)と、球界再編問題のあった04年と同じ。12球団の方が、彼らが中で決めないと。そうしないと新しい野球界は生まれない。選手たちはできる。(コミッショナー辞任へ)具体的に提示して、ファンを動かして…。でも、僕はやっちゃいけないと思う。だから静観しているというか…。第三者機関で、コミッショナーを決めるやり方も12球団で変えてほしい。腰掛け、お飾りじゃなく、ちゃんとした人がならないと、と思う」

 ――その第三者機関の調査も始まる。

 「NPBを変えるために、今のシステムを変えるための一番のチャンス。どこまで踏み込めるか。いつこういうことがあって、(事務局長の)下田さんを辞任させて…、だけの第三者機関はいらない。コミッショナーの位置付けなどを含め、どういう構造にしていくか。とにかくシステムを明確にしてほしい」

 ――期待は大きいか。

 「どうしてこういうことが起こったのか。今の組織のままじゃ変わらない。例えば12球団で会議をして、12球団で何かをやっていこうとしても無理。利害関係があって。ましてや(新聞社など)同じ業種があるのだから。相手が言ったことに反対するのは当然」

 ――ボールの変更は、選手にとって労働条件に関わる。今後、NPBに対して訴訟などの可能性はあるのか?

 「選手たちはそんなことはしないと思うが…。シーズン中でも契約更改交渉の時でもいいから、相談に乗る、窓口になるというメールは(各選手に)した。可能性はあるので。ただ、球団には(契約内容をあらためて)見てもらわないと。見せるように持っていかないといけない。12球団が知らぬ存ぜぬ、でいったら大間違い。(統一球の問題は)議題に載っていたんだから、知らないじゃ済まない。あなたたちもコミッショナーと一緒ですよ、と。その時はかみつこうと思っている」

 ――いわばNPBは日本球界のトップ。各方面への波紋も大きい。

 「今回の統一球のことで、アマとのこと(プロ経験者の指導者就任、いわゆるプロアマの雪解け)がなくなったらどうしよう、と。10何年もやってきてね。そもそも大学、高校野球ともNPBの体制に信頼がない。(選手会側はアマ側に)最高責任者はコミッショナー、コミッショナーがちゃんとやりますからって言ったのに…。コミッショナーがあれだからね。やばい!全部ひっくり返った、と思ったよ」

 ――18日の日本学生野球協会の理事会で、学生野球資格を回復する研修制度は承認された。

 「実は当日の会見も、最初は加藤コミッショナーも一緒に、という運びだった。ところが朝の7時半ごろ、アマ関係者から電話があって“そちらから遠慮してくれないか?”と。“はい。(事務局長の)下田さんには僕から言います”と答えた」

 ――とにかくNPBは、抜本的な改革が求められる。

 「来季の巨人―阪神の開幕戦をアメリカでやろうというのもそうだけど、なぜ向こうでやるのか意味が分からない。(来季からの)イニング前のベンチ前でのキャッチボール禁止も、一方的に言ってきた。全てにおいて、決まったことのように発表する。そして統一球の問題。だから選手たちの信頼がない」

 ◆松原 徹(まつばら・とおる)1957年(昭32)5月生まれ。82年にロッテ球団の管理部に入社。1軍マネジャーなどを務める。88年、中畑清氏(現DeNA監督)が労組・日本プロ野球選手会の初代会長を務めていた際に選手会事務局勤務。歴代の会長、事務局長を補佐し、00年4月1日付で自身が事務局長に就任した。

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