ソフトB千賀「お化けフォーク」の正体は…?野田浩司氏が斬る

[ 2013年6月20日 10:15 ]

12球団の強打者たちが悪戦苦闘するソフトバンク・千賀のフォークの握り

 ソフトバンクの2年ぶり4度目の交流戦優勝にセットアッパーとして貢献したのが、現在26試合連続無失点中の千賀滉大投手(20)だ。最速156キロの直球を誇るが、最大の武器は何といっても落差の大きいフォーク。「お化けフォーク」の元祖で、95年のロッテ戦(千葉マリン)では1試合19奪三振の日本記録を樹立した元オリックスのエース・野田浩司氏(45)が、3年目右腕のウイニングショットを解析した。

 セ・リーグの打者は「あんなフォークは見たことない」と口をそろえる。13日の初対戦で空振り三振に倒れたヤクルトの武内は「高めに来たと思ったら、低めのボールゾーンに落ちた」と驚きの声を上げた。奪三振率は驚異の13・37だ。

 大ブレークの予感が漂う千賀の存在を野田氏が知ったのは昨年。ソフトバンクの加藤伸一2軍投手コーチから「凄い球を放るピッチャーがおるから覚えておいて」と言われたという。現役時代は阪神、オリックスの主戦として活躍し、1試合19奪三振の日本記録をマーク。打者の視界から揺れながら消えて落ちる魔球は、野村克也氏から「お化けフォーク」と称された。そんなフォークの達人は、千賀が空振りを取れる理由について真っ先に腕の振りを挙げる。

 「直球と同じように腕が振れるのが一番の魅力。千賀君は直球が速いので、どうしても打者はタイミングを早める。真っすぐと思って振ったら、実はフォークで空振りしてしまう」

 人さし指と中指でボールを挟んで投げるフォークは、ボールを抜くことに意識しすぎると、腕の振りが緩みがちになる。「手首を固定して、上からボールを叩きつける投手はいい軌道で落ちる。オリックスの平野佳がそう。千賀君も同じタイプ。直球は縫い目に指先を掛けてピンッとはじくが、フォークは指を引っ掛けてボールに比重をかけ、腕だけをバーンと振る」。(1)リストを使わない(2)直球以上に腕を振る――。この2点が生命線だと解説する。

 3年目右腕の「工夫」にも着目する。野田氏自身は「全く縫い目に掛けず、ボールを回転させない」オーソドックスな握りだったのに対し、千賀は人さし指だけを縫い目に添える。両指を縫い目に掛けないと、中指の方が力が強くスライダー回転するため、人さし指の使い方を改良しバランスを調整した。さらに空振りを狙うときはボールの下に置く親指を人さし指の側に近づけている。「千賀君のフォークはストライクゾーンから急にガクッと落ちる。親指がずれていた方がスピードは落ちる分だけ、落差が大きくなる」と分析した。

 千賀のフォークは横浜とマリナーズで日米通算381セーブをマークした佐々木主浩氏に似ているという。「直球が130キロ台後半だった自分とは違う。短いイニングに適している投手で、大魔神と同じようなイメージ」。育成選手出身の20歳。野田氏は「時間をかければもっといいものになる」とさらなる飛躍に期待している。

 ▽野田氏の1試合19奪三振VTR 95年4月21日のロッテ戦(千葉マリン)。7回までに17三振を奪い、62年足立(阪急)や90年野茂(近鉄)、94年野田氏自身がマークした当時の日本プロ野球記録に並んだ。8回に18個目を奪うと、9回にも1奪三振。計19奪三振で新記録を樹立した。しかし、延長10回に平井が打たれサヨナラ負け。

 ◆野田 浩司(のだ・こうじ) 1968年(昭43)2月9日、熊本県生まれの45歳。多良木では甲子園出場なし。九州産交から87年ドラフト1位で阪神に入団。オリックス移籍1年目の93年に17勝で最多勝。95年4月21日のロッテ戦(千葉マリン)で1試合19奪三振の日本プロ野球記録を樹立。通算89勝87敗9セーブ、防御率3.50、1325奪三振。00年に現役引退し、オリックス投手コーチなどを務め、現在は神戸・三宮で肉料理店「まる九」を経営する。

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2013年6月20日のニュース