サイ・ヤング賞候補?岩隈 2年目の大躍進 3つの秘密と数字

[ 2013年5月31日 09:28 ]

防御率2・35の好成績で現在5勝を挙げているマリナーズ・岩隈。サイ・ヤング賞候補に名乗り出た

 岩隈はサイ・ヤング賞候補なのか?――。今、米メディアの間でちょっとした議論が起こっている。マリナーズの岩隈久志投手(32)はここまで5勝1敗、防御率2・35の好成績をマーク。投手最高の栄誉であるサイ・ヤング賞の評価基準となる防御率、被打率、WHIPなどの項目でリーグ上位につけている。昨季まで全米的には無名に近かった2年目右腕の大躍進の秘密は何か。3つの数字から分析した。

 今季のア・リーグは日本人投手の活躍が目立つ。ダルビッシュや黒田はチームのエース格であり、米メディアもある程度の成績は予測できた。しかし、岩隈は「サプライズ」と映っている。「バックホルツ、ムーアと並ぶサイ・ヤング賞候補だ」「シーズン最後までしっかり持つのか」。どちらかと言えば、メディア関係者はこの活躍に懐疑的な人が多い。しかし、現場の声は違う。岩隈の凄さを示す3つの数字がある。

 (1)37・4%=ボール球を振らせる確率

 これはメジャー全体で1位の数字だ。昨季から6度対戦し、岩隈に4勝0敗、防御率1・02という圧倒的な数字を残されている同地区のエンゼルスのジム・エパード打撃コーチはこう分析する。

 「メジャーで成功するレシピのような投球。一番の長所はコントロール。外角低めギリギリに真っすぐを制球できる。そこからスプリットやスライダーを決められたら、ボール球でもバットが出てしまう」

 初球ストライク率は65・2%。これは黒田の63・8%、ダルビッシュの60・6%を上回る。常に投手有利の状況に持ち込むことができている。そうなれば、武器であるスプリットが効果を発揮する。

 (2)42・1%=フライの確率

 岩隈と言えば、変化球を集めてゴロを多く打たせるイメージが強い。しかし、今季は変わった。昨季と比較し、ゴロは52・2%から44・2%に減少し、フライが27・3%から42・1%に急増。一般的に「フライボール・ピッチャー」は150キロ台後半の直球で高めのゾーンで勝負する投手が多いが、岩隈は正反対の投手だ。マリナーズのショパック捕手が証言する。

 「相手チームは岩隈が低めの制球がいいことは分かっている。だから、打者は低めのゾーンに目付けをする。そこに切れのいい直球が来ると、逆にフライになる」

 ゴロが多いと、打ち取った打球でも野手の間を抜けて安打になることがあるが、飛球はアウトの確率がより高くなる。特に岩隈は内野のポップフライが昨季の6%から11・3%と増えた。メジャーでは先発投手の安定度を示す数値として、1イニング当たりに許した走者(安打+四球)の割合を示す「WHIP」が高く評価される。岩隈の0・84はリーグ堂々1位だが、「フライボール・ピッチャー」に変身したことも大きな要因といえる。

 (3)13・9球=1イニング当たりの投球数

 これはメジャー全体2位、ア・リーグ1位の少なさ。今季の岩隈は一度リズムに乗ると、手が付けられない投球をする。5イニング以上をパーフェクトに抑えたことを意味する16打者連続凡退がここまで2試合もある。さらに11打者連続凡退が2試合、10打者連続凡退が1試合。マリナーズの二塁手アクリーは岩隈の時は守りやすいと指摘する。

 「どんな球種でも狙ったところにいくから、打者がどんなスイングをしそうとか、ゴロがどっちに飛びそうとか予測しやすい」

 球数が少なければ、当然長いイニングを投げることができる。岩隈自身も2年目を迎えてメジャーの打者の特徴が分かってきたという。相手を知れば知るほど、プラスになるのが岩隈の投球だ。

 「日本は右打ちとかチーム戦術でしっかり当ててくる。こっちはパワーもあって怖いけど、振ってくれる分だけ打ち取りやすい面もある」

 圧倒的な球威と変化球で三振の山を築くダルビッシュ、メジャー屈指の動く球の使い手となった黒田。岩隈はまたタイプが異なり、抜群の制球力と投球術でメジャーの強打者を牛耳る。この数字を持続できれば、日本人初のサイ・ヤング賞という快挙も見えてくる。

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2013年5月31日のニュース