大谷 イチロー級外角高め打ち今季6の6 野手出場連敗10でストップ

[ 2013年5月30日 06:00 ]

<広・日>初回1死、打球をうまくバットに乗せて左前打を放つ日本ハム・大谷

交流戦 日本ハム8-1広島

(5月29日 マツダ)
 イチロー級のバットコントロールだ。日本ハムの大谷翔平投手(18)が29日、広島戦に「5番・右翼」で出場し、初回に外角高めのシュートを左前にはじき返した。コース別で外角高めは6打数6安打と驚異の打率10割をマーク。3回には右前打を放ち、広角打法で2試合連続となる今季6度目のマルチ安打で打率・348とした。大谷にとって野手で出場した試合は10連敗中だっただけに、この白星は大きな1勝となった。

 もはや芸術だ。外角高めの144キロに大谷の体が反応する。しっかり踏み込み、右肩は全く開かない。ボールとの距離感を保ったまま、巧みなバットコントロールで鮮やかに左前へ運んだ。

 初回だった。主砲・中田の先制3ランの興奮が冷めやらぬ中、スーパールーキーが見せたのは誰をも酔わせる打撃だ。目を見張ったのはファンだけではない。渡辺打撃コーチは「凄いねえ。ポイントの持っていき方とスイングの軌道は大したものだ」と舌を巻く。それほどの衝撃だった。

 2ボール2ストライクからの5球目。広島・大竹が空振りを狙ってきたシュートだ。大谷は「2ストライクまでは長打を狙い、追い込まれたらシングル(単打)でいいので逆方向を意識した。高めのボール気味の球だったけど、悪くないと思います」と事もなげに話したが、そんな簡単な打撃ではない。右肩が開かないからギリギリまでボールを呼び込め、手打ちのように見えるスイングなのに、強靱(きょうじん)なリストで大竹の球威にも負けなかった。鮮やか過ぎる外角打ち。これで外角高めは6打数6安打で、何と10割と数字も芸術的だ。

 3回には、2死一塁の場面で一、二塁間が空いてるのを見るや初球の103キロカーブを引っ張って右前打。左へ右へ、まるでイチロー(ヤンキース)のように打ち分けてみせた。これで2試合連続マルチ安打。5回には際どい内角球を見極めて四球を選んだ。「大竹さんは内角直球で決めたいだろうと。でも、いいコースだったので手が出なかった」。謙遜するが、内角が頭にあったからバットが止まった。2安打に1四球。栗山監督は「俺が何か言うことはないよ。翔平を見て思うことはみんな一緒」と言った。2年前の夏の甲子園。帝京戦で放った一打に花巻東・大谷の非凡さを見たときから、指揮官には今の姿が想像できていたのかもしれない。

 7回にはプロ初得点も記録した。「えっ、初めてでしたっけ?」と笑ったが、もっとうれしいこともある。実は4月9日の楽天戦(東京ドーム)から続いていた野手で出場した試合の連敗が10でストップしたのだ。「気にはなっていたので…。凄くうれしかったです」

 二刀流の「野手」で久しぶりに勝利に貢献。次は6月1日の中日戦、今度は「投手・大谷」でプロ初勝利を目指す。

 <大谷の2年夏の甲子園>花巻東のエースとして、1回戦で帝京(東東京)と対戦。左太腿裏の肉離れを抱え先発は回避し「3番・右翼」でスタメン出場した。2点を追う6回無死二、三塁、石倉の外角直球を左打席から逆方向へ運び、フェンス直撃の同点左越え打。この試合は3打数1安打2打点で、投手としては4回途中から強行登板。5回2/3を6安打3失点(自責1)と健闘も、試合は7―8で惜敗した。

 ≪2戦連続2安打、打率上昇.348≫大谷(日)が2試合連続となる2安打の固め打ち。自身1試合2安打は6度目だが2試合連続は初めてだ。チームの高卒新人では東映時代の59年張本が30度の複数安打をマーク。ただし、大谷と同じ出場18試合時では2度止まりでペースでは上回る。また、大谷の現在の打率は.348。張本は最終打率が.275でリーグ16位だったが、打率3割以上は出場7試合目の.350が最後。大谷はどこまで3割をキープできるか。

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2013年5月30日のニュース