「俺がベンチからサイン出す!」 谷繁、権藤氏と作り上げた攻撃的リード

[ 2013年5月7日 10:33 ]

<ヤ・中>試合後の会見で笑顔を見せる谷繁

プロ野球 セ・リーグ 中日3-7ヤクルト

(5月6日 神宮)
 中日・谷繁が球界屈指の捕手として地位を不動なものにしたのが横浜で日本一に輝いた98年だ。当時の監督が、中日の前投手コーチでもある権藤博氏。2人の出会いが「続きの谷繁」と言われる攻撃的リードをつくりあげた。

 「もともといいセンスを持っていた。だが、オープン戦なら思い切った攻めをするのに、シーズンが始まるとありきたり。だから監督になった時に“シゲ、俺がベンチから全球サインを出す”と言ったんだ」

 監督が捕手にサインを出すのは屈辱といえる。だから、「別に俺の通りに出さなくていい。参考にしろ。責任は俺が取る」と告げた。ただ、2人の感性は似ていた。やられたらやり返す。これでもかと同じところを攻める。「おまえなら前の打席でヒットした球がまた来ると思うか?思わんだろ。なら、同じ球を投げさせろ」。権藤監督がどんどん内角のサインを要求すると、谷繁は「いいんですか?こんなに…」と驚いたが、「いいか、悪いか、やってみろ!」と背中を押した。

 もちろん、時にはお互いの考えが分かれる。

 権藤氏「俺はスライダーを出したろ?」

 谷繁「いや、あそこは絶対シュートです」

 権藤氏「素晴らしい!」

 こうして2人の信頼関係は強まった。「途中から俺のサインは軽い気持ちでしか見てなかったんじゃないかな。見たふりをしているけど、見ていない。それぐらいしたたかなヤツだよ」

 打者・谷繁にも目を細める。「打率が悪い年はホームランを打つ。またはその逆。それで帳尻を合わせるんだよ」。天性の素質と努力、有能な指導者たちとの出会いが、名捕手をつくりあげた。

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