「嫌い」から10か月…能見&マートン 宿敵巨人下し仲直り

[ 2013年4月10日 06:00 ]

<神・巨>「アイシテル」とお立ち台で阪神・マートン(左)は能見に抱きつく

セ・リーグ 阪神2―0巨人

(4月9日 甲子園)
 愛の劇場で宿敵を止めた。阪神は9日、巨人と対戦。今季初の伝統の一戦で、エースの能見篤史投手(33)が今季初勝利を両リーグ完封一番乗りで飾った。散発5安打、10三振を奪い、巨人の開幕連勝を7でストップ。打ってはマット・マートン外野手(31)が6回に先制打を放った。昨年6月に「アイ・ドント・ライク・ノウミサン」と発言したエースを援護。お立ち台で「アイシテル」と叫び、甲子園は沸きに沸いた。

 今季初の甲子園のお立ち台に上がったマートンは、インタビュアーの質問をさえぎった。そして、隣にいる能見に向け、いたずらっぽく笑った。

 マートン「チョットマッテ、チョットマッテ。ノウミサン、アイシテルー!」

 狭いスペースで熱い抱擁。直後に、割れるような大歓声が甲子園を包んだ。あの「事件」を知るファンから、笑いも起こった。そして、マイクは能見に向けられた。

 能見「照れくさいですけど…。必ず打ってくれると思っていた。ナイスバッティング!」

 能見が5回4失点でKOされた昨年6月9日のオリックス戦(甲子園)。緩慢な守備で相手に得点を許したマートンは試合後に「アイ・ドント・ライク・ノウミサン」と発言。真意ではないにせよ、チームメートを公然と「嫌い」と言った発言は大問題となった。あれからちょうど10カ月。同じ甲子園の舞台で、2人の笑顔が「和解」を物語っていた。

 開幕から負けなしの7連勝中だった巨人相手に、能見は立ち上がりから飛ばした。初回は長野、坂本から見逃し三振を奪うと、2回には阿部からも見逃し三振。WBCで同僚だった3人に、手が出せない直球を決めた。3回までに6三振を奪い「最初から全力でいきました」。米国から帰国後、首脳陣は疲労を考慮して登板を1度飛ばす案を用意。だが首を縦に振らない。WBCで走り込み不足だったが、登板翌日までダッシュを繰り返した。エースの自覚で開幕ローテーションに加わった。10奪三振。両リーグ一番乗りの完封で昨季王者を止めた。

 昨年に続く甲子園開幕戦での完封勝利。直球の最速は140キロ台前半だったが、配球には工夫があった。「いろいろなデータがあるんでね」と、この日は決め球のフォークを減らし、直球とスライダーを軸に組み立てた。和田監督は「能見に尽きる。かなり攻めていた」と手放しで称えた。

 中日、広島が勝ったため、敗れれば11年6月以来の単独最下位に沈む危機だった。巨人とは対照的に開幕ダッシュは決められなかったが、甲子園での1勝は反攻を予感させた。能見はお立ち台で叫んだ。「まだ始まったばかり。一戦一戦戦っていくので我慢して応援してください」。エースと4番の和解を見届けた4万4019人の観客から温かい拍手が起こった。

 ≪6年ぶり2度目≫能見(神)が巨人打線から10三振を奪い、無四死球完封で今季初勝利。自身無四死球完封は07年8月18日広島戦に次いで6年ぶり2度目。ただし、前回は奪った三振が5個。2桁奪三振で記録したのはプロ入り初めてだ。また、巨人戦の完封勝利は昨季4月6日に今季と同じ1回戦でマークして以来2度目。阪神の投手が巨人とのシーズン初戦に完封勝利を挙げたのは他に40年若林、50年梶岡、69年江夏、95年藪だけ。1人で2度は能見が初めて。なお、阪神投手の両リーグ完封一番乗りは04年4月9日中日戦の井川以来9年ぶり(西武・松坂も同日に記録)。

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2013年4月10日のニュース