済美・安楽 打球直撃も鉄人だ!2戦391球完投&V打

[ 2013年3月31日 06:00 ]

<済々黌・済美>8回2死一、二塁、決勝の2点三塁打を放ち、ガッツポーズの済美・安楽

第85回センバツ高校野球大会9日目3回戦 済美4―1済々黌

(3月30日 甲子園)
 鉄人だ。激痛も一瞬だけだった。済美(愛媛)の安楽はマウンドで仁王立ちした。初回1死、川原への7球目をライナーではじき返されると、打球は右手首を直撃した。アクシデントにもまるで動じなかった。

 「勝ちたい思いが強すぎて(右手首の)感覚や痛みは感じなかった」。真っ赤に腫れ上がった右手首で3回に149キロを計測。9回にも最後の打者、川原を148キロ直球で空振り三振に斬った。初戦の広陵(広島)戦は延長13回を232球、この日は159球で9回7安打1失点。前回の152キロには及ばなかったが、中3日で計391球は、驚異的なスタミナだ。

 「エースは抑えることが大前提ですが、4番を打たせてもらっている。チャンスに打たないとダメ」。同点で迎えた8回2死一、二塁では初球を左中間へ運ぶ決勝2点三塁打。守備でも7回、川原の足元を襲った打球に「とっさに出た」と右足で反応。打球の方向を変えて、遊ゴロとした。

 阪神・藤浪級の肉体を誇る。昨春夏甲子園を連覇した右腕をサポートするアヴィススポーツの鈴木拓治代表は、大阪滞在中の安楽もケア。「安楽君は肩肘の関節が柔らかく可動域が広い。藤浪選手と似ている。球速はあと5キロ以上は速くなる」と証言。29日の練習後は焼き肉7人前とどんぶり2杯の飯を平らげるなど、16歳は発展途上だ。

 次戦は大阪桐蔭の3季連続優勝を阻止した県岐阜商が相手。「凄い歓声だった。150キロを期待されているので、出せなくて残念」。初出場初優勝を飾った04年以来9年ぶりの8強進出へ導いた新怪物は無限の可能性が秘められている。

 ≪松坂以来の球数≫済美・安楽が159球を投げ、広陵戦の232球と合わせた球数は391。甲子園で1投手が投げた連続2試合の合計球数では、98年夏に横浜・松坂が星稜との3回戦で148球、PL学園との準々決勝で250球の計398球を投げて以来の多さ。なお安楽は中3日、松坂は連投だった。

 ≪04年以来の四国勢躍進≫高知と済美が勝ち準々決勝進出。四国勢が2校以上8強入りするのは04年(済美と明徳義塾)以来、23回目(8校参加の1924、27年は除く)。

 ▽負傷を抱え続投した主な投手

 ☆別所昭(のち毅彦、滝川中) 41年、岐阜商との準々決勝で、9回走塁時のクロスプレーで左腕を骨折。それでもグラブを外し三角巾姿で12回途中まで続投。延長14回に敗れ涙を流す別所を、大阪毎日新聞は「泣くな別所、選抜の花だ」と称えた。

 ☆王貞治(早実) 57年の大会中に利き手の左人さし指と中指を負傷し、決勝の高知商戦ではユニホームやボールを血染めにしながら力投。3失点完投で初優勝に導いた。

 ☆大谷樹弘(作新学院) 雨の中で行われた2012年の1回戦、倉敷商戦で右手中指のマメをつぶしながら3失点完投。痛みに耐えながらシュートを多投し「傷口に引っかかるけど、投げるしかなかった」。

続きを表示

この記事のフォト

2013年3月31日のニュース