スクランブル態勢が足かせに 「起用法が見えない」嘆く投手も

[ 2013年3月21日 08:15 ]

台湾戦で降板する能見(手前)。首脳陣と選手には温度差があった

 「みんなで心を一つに戦う」と団結力を標ぼうした侍ジャパンの山本監督だったが、首脳陣と選手は一枚岩になりきれてはいなかった。ある投手は「どこでどう投げるか分からない。どう起用されるかも分からず、毎試合準備することは難しい」と嘆いた。

 東尾投手総合コーチは「2次ラウンドは特に勝敗で試合日程が変わる。先発を固定することもできないし、試合状況によって起用法も限定することはできなかった」と説明。2次ラウンド2戦目となった10日のオランダ戦に負けていた場合、救援投手の山口(巨人)を先発させるというプランも首脳陣の頭にはあった。目の前の一戦に全力を尽くし、投球数の少ない投手が次の一戦も備えるといったスクランブル態勢。それは、逆に選手が力を発揮しづらい状況となっていた。

 前回09年大会は松坂、ダルビッシュ、岩隈と絶対的な軸があった。その先発3本柱を周囲がサポート。選手からも役割は明確に見えていた。だが、今回は田中が1次ラウンドのブラジル戦でKOされ、首脳陣は「軸なき戦い」へと方針を変えた。ただ、投手のメンバー構成を見ると各球団の先発投手が多かった。普段からブルペン待機に慣れていない投手が何度も肩をつくる。「起用法が見えないし、中途半端に投げたくない」という選手と首脳陣の目に見えない温度差は試合を経るごとに大きくなっていった。

 打線も含めて「日替わり」の戦いを否定するものではない。だが、日々変化するのであれば、その方針を選手に理解させ、逆に首脳陣も選手の心の声をくみ取る必要はあった。双方に「あいまいさ」が残った。

 データに関しても、山本監督は「選手の思いきりを消したくない」と詰め込みを避けた。それが、打線全体の投手に対するアプローチにバラつきを生んだことも否定できない。チームとしての「形」を示せないまま大会は終わった。

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2013年3月21日のニュース