イチロー 内川を擁護「あのスタートができたのは凄い」

[ 2013年3月21日 06:00 ]

侍ジャパンの勝負を左右した重盗に言及したイチロー

 ヤンキースのイチロー外野手(39)が19日(日本時間20日)、第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝で痛恨の走塁ミスを犯した侍ジャパンの内川聖一外野手(31=ソフトバンク)を擁護した。プエルトリコ戦での敗戦を決定づけた8回の重盗について激白。日米通算651盗塁を誇り、過去2大会の優勝に貢献した男は走者の心理状況なども解説した上で、内川の心情を思いやった。

 侍ジャパンの3連覇が事実上、ついえたといってもいい8回の重盗失敗。日本中で議論が百出した場面について、イチローが熱を込めて語った。フィリーズとのオープン戦後。WBCについて話すのは、大会開幕以来初めてのことだ。プエルトリコ戦の中継は見ていなかったが、「どんなプレーかと思った」とインターネットのダイジェスト映像を再生したという。

 1―3の8回1死一、二塁での重盗。内川は井端の帰塁に気づかずに、二塁へ走り、アウトになった。内川のミスを指摘する声が多いが、イチローの見解はこうだ。

 「モリーナがいたからでしょう。あのタイミングでは二塁でアウトになってしまう可能性があった。ほとんどの捕手ならそう(=先行走者を見ながら走る)。でも、モリーナでは無理だったんじゃないですか」

 「グリーンライト」の重盗では二走が主導権を握る。一走は二走の動きに反応するため、単独盗塁よりスタートが遅れる上に、捕手は昨季は盗塁阻止率48%とメジャー屈指の強肩Y・モリーナ。走ると決めた時点で、他に目を配る余裕はなかったという見解だ。分析はさらに詳細に及んだ。

 「井端が2歩半くらいだったと思うけれど、あそこで内川がそれを見たとしても、止まるまで2歩は行ったと思う。そのタイミングで止まったとしても挟まれてしまうんじゃないですか」

 内川は試合後、責任を感じ涙を流した。しかし、イチローは極限の場面での一走の立場を自身に置き換えて擁護した。

 「あそこで、あのスタートができる。凄いこと。大体(スタートを切らず)止まることを選択する。自分ならあれができたかというと、その自信はなかなかない。ミスかそうでないかと言うよりも、モリーナの存在。それがあの捕手の力」

 侍ジャパンは2次ラウンドの台湾戦で、9回の鳥谷の盗塁から逆転勝利につなげた。生命線のスモールベースボール。左腕ロメロの大きなモーションもイチローは知っている。「あのモーションが迷いを生む。捕手モリーナでは基本無理なんですけれど、あの投手だからよぎるわけです」と一定の理解を示した。

 日米で盗塁王を獲得し、日米通算651盗塁(日199、米452)をマークしているイチローは「走塁は野球で最も難しい技術」が持論。06、09年とWBC連覇へチームをけん引したが、09年は開幕前に胃潰瘍を患った。その重圧を身をもって経験している。だからこそ、敗戦の責任を背負い込んでいる内川の気持ちを思いやった。

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