代役4番・糸井 536発山本監督から“心”継承 

[ 2013年3月2日 06:00 ]

糸井(左)にトスを上げる山本監督(右)

WBC1次リーグA組 日本―ブラジル

(3月2日 ヤフオクD)
 プレッシャーを払いのけたかったのか。室内練習場でのフリー打撃を終えた後、糸井(オリックス)は山本監督に申し出た。「トスを上げてもらえますか」。ティー打撃の相手をお願いすると、約15分間にもわたって打ち込んだ。

 「よっしゃー!」。室内に山本監督の声が響き渡る。赤ヘル黄金期の4番で通算536本塁打の大打者は「4番の心」を知っている。打って当たり前、負ければ全てを背負い込む。阿部の故障によって代役4番を任された糸井。トスを上げ、そのボールを打つ。無言の会話。技術的なアドバイスは特になかった。

 「トスは(自分の方から)お願いした。意図はないですよ」。糸井は短くそう言ったが、侍ジャパンの4番の重みを感じていた。昨年11月18日のキューバ戦(札幌ドーム)で「人生初の」4番を打って4打数2安打。大きな自信を手にしていたが、急きょ阿部の代役を務めた28日の強化試合では5打数無安打に終わった。無意識に力が入り、体が突っ込んで内野フライに内野ゴロ2つと2三振。「きのうはきのうです」と引きずらないように努めた。

 驚異的な身体能力を生かした打撃で、反応の良さは球界随一。それが力みからタイミングがずれて反応の良さが消えていた。修正点が分かっているからこそ、山本監督はティー打撃で山なりの緩いトス。タメをつくって体が突っ込まないように促した。立浪打撃コーチともフォームをチェックした糸井は「修正になればいいですけど。頑張ります」と言った。

 「(大会に向け)燃えるものがある。4番は彼しかいないだろう。バッティング自体は悪くないよ」。山本監督にも迷いはない。2日のブラジル戦。侍ジャパンは「4番・糸井」で船出する。

 ▽糸井の打順別成績 打順別で高打率を残しているのは3、5番。3番では最多の通算242試合に出場し、打率・323、20本塁打、107打点。09年以降は4年連続で打率3割を超えている。5番では通算120試合で打率・308、15本塁打、59打点。10年には打順別で最多の115試合に出場。シーズン中に4番での出場はないが、中軸にふさわしい結果を残している。

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