イチロー 黒田討ち弾「トータルで面白かったというか」

[ 2013年2月23日 06:00 ]

フリー打撃で黒田(右)との対決を終え笑顔で話しかけるイチロー

 2013年イチ号は黒田から!ヤンキースのイチロー外野手(39)が21日(日本時間22日)、フリー打撃で黒田博樹投手(38)と対決。最後の7球目に右腕の代名詞とも言える「フロントドア・シンカー」を見事に右翼席中段に運んだ。新たに2年契約を結んだイチローと開幕投手候補にも挙がる黒田。2人の日本人選手のハイレベルな対決にスタンドは大いに盛り上がった。

 練習終了後のクラブハウス。イチローの元に、帰途に就く黒田が歩み寄る。「お疲れさまでした。勉強になりました」と頭を下げた右腕に、イチローは満面の笑みで手を振った。

 正午すぎに始まったフリー打撃。マウンドに向かう背番号18が、打撃練習をしていた背番号31に声を掛けた。

 黒田 打つんですか?

 イチロー 打つよ。

 黒田はこの時、初めてイチローと対戦することを知り「ちょっとびっくりした」。そして、打者に球種を伝えない「ガチンコ対決」が始まった。

 1回り目は、初球のシンカーに二ゴロ。4球目のフォークは辛うじてバットに当たるファウル。「テーマはストライクゾーンに投げること。この時期にしてはまずまず」。黒田は5球目まで安打を許さなかった。

 2回り目。イチローのスイッチが入った。初球の外角スライダーを中前へ。そして2球目、内角のシンカーをフルスイングし、右翼席中段へ運んだ。背番号31はヘルメットを大きく上げて、スタンドの歓声に応えた。

 イチロー 見ている人が盛り上がっていたからね、ちょっと。トータルで面白かったというか。

 黒田 イチローさんなので、どういう反応をするのかと思って投げた。やっぱり通用しなかった。僕は凄く勉強になりました。

 右投手が左打者に投げるシンカーは外角のボールゾーンに逃げていく軌道が一般的だが、黒田は体に当たりそうなコースからストライクゾーンに入れてくる「フロントドア」を得意とする。シーズン中のように打者をのけぞらせるほど厳しく攻めるわけにはいかなかったが、それでも完璧に捉えられた。イチローは「日本人のピッチャーはね、安心して(踏み込んで)いけますからね」と、してやったりだった。

 大リーグでは、フリー打撃は投手の練習で、打者は目慣らしの意味合いが強い。イチローも昨年まではほとんど振らなかった中で、7球中5球もスイングしたのは、黒田に信頼を寄せるからに他ならない。対決後、報道陣から黒田が「勉強になった」と言っていたことを伝えられると「何でや」とひと言。一方の黒田は「完璧に打たれたので、逆に気持ちよかった」と爽やかな笑みをこぼした。最強日本人タッグの絆はまた強くなった。

 ▽フロントドア 右投手の場合、左打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンに入ってくる軌道を言う。メジャーでは多く投手が投げる、外角のボールゾーンから入ってくる「バックドア」の対義語。バックドアと比較すると、死球になる可能性があるために制球は難しいが、マスターすれば、打者には体に当たりそうな軌道で来るために対応が難しい。メジャー通算355勝のグレグ・マダックスはフロントドアのチェンジアップを得意としていた。

 ▽公式戦でのイチローVS黒田 通算6打数1安打。日本時代は対戦がなく、大リーグでもリーグが異なっていたため、09年6月28日のドジャース―マリナーズの交流戦で初めて実現。イチローが3回の2打席目に二塁内野安打で出塁し、その後の3得点につなげた。試合後は「もっとシャープなイメージだったけど、ちょっと丸く見えた」と体形にまで言及。負け投手となった黒田は「いい思い出になる」と話した。

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2013年2月23日のニュース