荒木との熊本トレ…大島の飛躍支えた「早振り」と日本一の石段

[ 2013年1月27日 12:07 ]

昨年1月、先輩・荒木(後列中央)らと自主トレを行った中日・大島(左端)

野球人 中日・大島洋平(下)

 昨年1月7日。中日・大島は熊本にいた。先輩・荒木の自主トレに平田、中田亮とともに初参加。同県美里町にある3333段の「日本一の石段」を先頭で上り切った。頂上にあった「白龍が昇るが如(ごと)し石段は三三三三で日本一」と書かれた石碑の前で、全試合出場、3割、30盗塁という大きな目標を胸に刻み込んだ。

 「キャンプでは前年と特に変えなかったけど、熊本で荒木さんとやった“早振り”だけは毎日、全メニューが終わった後にやっていた。最後までへばらずにできたのも、熊本で足腰を鍛えたおかげだと思います」

 目標の中で最も重視したのが全試合出場。一昨年、後半戦で疲れが出て失速した苦い経験を糧に、一年間戦い抜ける体づくりに着手した。その一つが荒木流の「高速素振り」だ。1振り1秒以内という高速で10から20スイングを10セット。そしてキャンプイン前に徹底的に足腰をいじめ抜いた石段上りだった。

 その成果は目覚ましかった。終盤で失速するどころか、どんどん凄みを増していった大島のバットは、10月のクライマックスシリーズ(CS)でも爆発。ヤクルトとのファーストステージはなんと13打数9安打の打率・692。巨人とのファイナルステージでも打率・310と結果を残し、侍ジャパンにも選ばれ、11月16、18日のキューバ戦に出場した。日の丸を背負うのは人生初だったが、この時の大島には自信があった。

 「CSの時の感覚が残っていたので正直“打てるやろ”と思っていた。1カ月ぐらい実戦から離れたけど、そんなに気にしなくていいかなと」

 だが、そのキューバ戦でピタリと当たりが止まった。ヤフードームで行われた16日の初戦、第1打席で一ゴロに倒れると、捕ゴロ、三振、右飛。捉えたはずが…。「実戦感覚が全くなかった。ヒットの打ち方が分からなくなっていた」。頭の中が真っ白になった。2試合ともフル出場しながら、9打数無安打。「ガツンと頭を叩かれた感じだった」と苦笑いする。

 ただ、この一年間でたくましく成長した大島はただでは転ばない。

 「逆に打てなくて良かったと今は思う。もし、あそこでも打って一年が終わっていたら“簡単に打てるやん”と勘違いしていた。それで本戦で打てないよりはいい。“そんなに甘くないよ”と言われたと思うので、もう一回、一からやります」

 中日の不動のリードオフマンが侍の斬り込み隊長になる日は近い。

 ◆大島 洋平(おおしま・ようへい)1985年(昭60)11月9日、愛知県生まれの27歳。享栄では甲子園出場なし。駒大、日本生命を経て、09年ドラフト5位で中日入団。1年目から開幕スタメンを果たし、11年ゴールデングラブ賞、12年には同賞とベストナイン、盗塁王。通算344試合で打率・279、4本塁打、48打点、48盗塁。1メートル76、74キロ。左投げ左打ち。

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