武田翔太 新球あっさりマスター、破竹の4連勝

[ 2012年12月26日 13:07 ]

誰もが「器用」と認める武田。チェンジアップも瞬時にマスター

野球人 ソフトバンク・武田翔太(中)

 武田の順応性の高さは誰もが認めるところだ。小川一夫2軍監督が「とにかく器用。何でもすぐに覚える」と言えば、湯上谷ひろ志寮長も「あれこれ注意したことがない。優等生」と口をそろえる。

 デビュー戦前日の7月6日。札幌ドームのブルペンでのことだった。武田は斉藤学投手コーチ(現リハビリ担当兼ファーム巡回投手コーチ)にチェンジアップの握りを尋ねた。投げてみると、ことのほか感触が良かった。

 「高校のときもチェンジアップは投げていたんですが、しっくりこなかった。あの日、将来使えたらいいなと思い、握りを教えてもらったんですよ。そしたらもう。“こりゃ、使える”ということになった」

 翌日の日本ハム戦。4回まで無安打投球を続けた右腕は、2点リードの5回に前日習得したばかりの「新球」を初めて試合で試した。しかも相手はリーグ屈指の強打者だった。先頭の稲葉に対して、1ボール2ストライクからの4球目。チェンジアップで見逃し三振に打ち取った。完全にタイミングを外されたベテランはあっけにとられるしかなかった。相手ベンチのデータには全くない球種だったのだから、それも当然だった。

 宮崎日大時代に「九州のダルビッシュ」と呼ばれたのは、1メートル87の容姿だけではない。直球だけでなく多彩な変化球を操るスタイルも酷似していたからだ。プロ入り当初、「今のボールが通用するうちは、今の球種を使っていきたい」と変化球はスライダーとカーブしか投げなかった。だが、デビュー戦を前に偶然覚えた新球が投球の幅を広げたのは確かだ。

 続く7月14日のロッテ戦(ヤフードーム)も6回無失点に抑え、球団初の新人の2試合連続勝利。8月19日のオリックス戦(京セラドーム)まで無傷の4連勝とし、今度は堀内恒夫(巨人)の記録に46年ぶりに並んだ。今後は毎年、球種を一つずつ覚える予定で「来年はフォークを投げるかもしれないです」とニヤリと笑ってみせた。

 順風満帆に見えた一年。だが、宮崎日大の河辺寿樹監督に「結構きついです。プロは5回ぐらいでバテますから」と本音を漏らすこともあった。宮崎での秋季キャンプ中には「いつも投げるたびに筋肉痛でした。7月に1軍に上がってからの3カ月は、あっという間に時間が過ぎたような気がします」と振り返った。ポストシーズンでは、19歳に思いもよらない重圧がのしかかっていた。

 ◆武田 翔太(たけだ・しょうた)1993年(平5)4月3日、大分県別府市生まれの19歳。宮崎・住吉中では県大会優勝。宮崎日大では1年秋からエースで、3年夏は宮崎大会準々決勝で敗退。11年ドラフト1位でソフトバンク入団。今季は11試合に登板し8勝1敗、防御率1・07で、パ特別表彰の優秀新人賞を受賞した。1メートル87、84キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

2012年12月26日のニュース