「代打の神様」桧山に元気をくれる2人の少女

[ 2012年12月23日 07:05 ]

4月12日の広島戦、前田健から   代打適時打を放つ阪神・桧山
Photo By スポニチ

野球人 阪神・桧山進次郎(下)

 阪神・桧山が「代打の神様」健在を示したのは、4月12日の広島戦(マツダ)だった。1点を追う7回2死一、二塁。先発・前田健の初球チェンジアップにバットを止めながら合わせた打球は中前へ落ちた。今季初適時打は、神様ならではの神業だった。開幕直後の4日のヤクルト戦(神宮)で今季初安打は放っていたが、復活を印象付ける一本だった。

 ある約束が、大ベテランの身体と精神を支えていた。昨年11月23日、桧山はアクシデントに見舞われた。京都府宇治市内で自ら主催したイベント中に左鎖骨を骨折。ある少女をかばっての負傷と報道され、その家族に責任を感じさせてしまう事態になった。

 少女からも手紙が届いたが「違う。自分が勝手な行動を起こした結果、相手方にご迷惑、ご心配をおかけした」と自身に非があるとし、心を痛めた。

 「どんなことをしても開幕に合わせたる」

 負傷直後は実戦復帰は早くて5月とされていたが、一刻も早く元気な姿を見せたかった。その思いがベテランの復活への道のりを加速させた。懸命なリハビリの結果、3月18日の教育リーグ・ソフトバンク戦(鳴尾浜)で実戦復帰。約束通り、開幕に間に合わせ、完全復活を遂げた4月下旬には、少女ら家族を甲子園に招待し全快をアピールした。

 今季で21年目。野球教室を主催するなどファンとの交流に力を入れてきた。「自分も勉強になる。少しでも多くの人に勇気を与えられればいいし、野球を見て元気になってもらえたらうれしい」。優勝した03年、当時の星野監督(現楽天監督)の意向で、阪神大震災の遺児を支援する、あしなが育英会「レインボーハウス」(神戸市東灘区)の子供たちを試合に招待。その中に背番号24のユニホームを着た小学5年の小島汀(みぎわ)ちゃんがいた。

 「24番(のグッズ)を持ってくれていて、ありがとうって。そこから友達になった。今では成長を見るのが楽しみ」。彼女は現在、大学生。甲子園のライトスタンドで売り子のアルバイトをしている。試合前のシートノックで見つけると思わず手を振ってしまう。今では逆に元気をもらうほどだ。

 今年も11月6日にレインボーハウスを訪問した。「僕がもっと活躍すれば日本一になれる」と43歳は来季8年ぶりのV奪回を誓った。声援を力に変え、来季もグラウンドに立ち続ける。子供たちに笑顔を届けるために。

続きを表示

2012年12月23日のニュース