ポスティング 公開入札導入も 入札金高騰の非公開見直し

[ 2012年12月2日 06:00 ]

 日本球界から大リーグへの移籍手段の一つであるポスティング・システム(入札制度)に関し、日米が見直しを協議していることが1日、分かった。大リーグ機構(MLB)が日本野球機構(NPB)に現行制度のルール変更を求め、早ければ来オフにも新制度を導入する可能性が出てきた。大リーグ球団が移籍希望選手の独占交渉権を非公開の入札で獲得する現行制度は入札金の高騰などが問題視されており、NPBはMLBに改正案として入札を公開するシステムを提案している。

 NPBがMLBに入札制度の見直しを求められたのは今年9月。大リーグ球団が移籍希望選手の独占交渉権を非公開の入札で獲得する現行からのルール変更で、球界関係者は「入札額1位(落札球団)と2位の(金額の)開き。入札球団には高い金額を払い過ぎたという意識があったようだ」と説明。その際MLBからは最低入札額を公開する提案をされたという。

 これを受け、NPBと12球団は協議したが、現行制度のままという結論に達しMLBに回答。しかし11月に再度見直しを求められ、議論の末にMLBに入札を公開する案を提案した。オークション形式(競り売り)で入札希望球団は他球団の入札額を知ることで、入札額の抑制につながる。また、公開されることで露骨な妨害入札を防ぐことにもつながる。別の球界関係者は「これならオープンだし適正価格になると思う。妨害入札もないし、選手との契約金が出せなくなる、ということもない」と説明した。

 現行制度の問題は第一に入札額が高騰する点。咋オフ、レンジャーズがダルビッシュを落札した金額は史上最高の約5170万ドル(約40億3300万円=レートは当時)。大リーグ球団は「入札額+契約資金(年俸など)」を選手への投資額とみており、予算にも限りがある。落札額は全て所属球団に支払われるため、選手側にもメリットはなかった。選手には自由に球団を選択する権利はなく、どちらかに折り合う意思がなければ破談となる。10年オフに岩隈(当時楽天)の交渉権をアスレチックスが落札したが、1回目の契約交渉が決裂すると、ア軍は一方的に交渉打ち切りを通告。日本国内では「ア軍の入札は他球団への移籍の妨害行為」とする見方もあった。

 NPBが提案する「公開入札オークション」はこれらの問題を解決できる可能性を秘める。現在までMLB側から回答はないが、来オフからの導入に向けて、今後も日米双方で協議を重ねていくことになる。

 ▽ポスティング・システム(入札制度) 日本のプロ野球から大リーグに移籍する際、日本選手との交渉権を入札により決める制度。日本の所属球団が大リーグ挑戦を容認すれば、海外フリーエージェント(FA)権を持たない選手でも移籍が可能となる。大リーグ機構から公示された日本選手に対し、大リーグの獲得希望球団が入札。最高入札額を日本の所属球団が受諾すれば30日間の独占交渉権が発生する。97年オフに伊良部秀輝(当時ロッテ)が強引にヤンキースと契約した経緯から、日本選手獲得の機会均等を求めた大リーグ機構側の要望もあって、98年に日米間選手契約に関する協定で定められた。日本選手の第1号は00年11月にオリックスから申請したイチローで、マリナーズが1312万5000ドル(約14億1800万円=レートは当時)で落札した。

 【過去のポスティング移籍失敗例】

 ☆岩隈(楽天)→アスレチックス×(10年11月) 入札にはマリナーズ、レンジャーズも参戦。1910万ドル(約15億8530万円=レートは当時)のア軍が交渉権を落札した。しかしア軍は初回の交渉で、この年の年俸が3億円だったにもかかわらず、4年総額1500万ドル(約12億4500万円)の低い金額を提示。岩隈側が拒否すると、交渉期間を2週間以上残しながら、一方的に交渉打ち切りを通告。交渉破談で移籍に失敗したのは初めてだった。

 ☆中島(西武)→ヤンキース×(11年12月) 落札額は250万ドル(約1億9500万円)。ヤ軍の条件提示は1年80万ドル(約6200万円)と低かったが、中島側は受け入れる構えだった。しかしヤ軍は1年契約満了後のFAを認めず、6年間の保有権を主張。控え野手という立場で飼い殺しにされる恐れがあったため、破談となり西武残留が決定。

続きを表示

2012年12月2日のニュース