涌井“逆風の1年”振り返る 万全シーズンインも進化求め裏目に

[ 2012年11月23日 10:09 ]

逆風の中でも応援してくれたファンに感謝する西武・涌井

野球人 西武・涌井(上)

 本拠・西武ドームの9回に流れ出すMr・Childrenの「Tomorrow never knows」。静かなイントロとは対照的に大歓声が湧き起こり、守護神・涌井がマウンドに向かう光景は今季の風物詩となった。

 05年に入団以降、登場曲の選曲は担当職員に任せていた。しかし、今季途中からミスチルを選曲。これまで明かしていなかった理由について涌井は口を開いた。

 「2番の歌詞の中に“Oh~Oh~”って叫ぶ部分があるんです。中島さんの(登場曲のGReeeeNの)“キセキ”みたいにファンの方にも盛り上がってもらえるかなと思って。結局、曲の頭から流れる形になっちゃったけど、盛り上がってもらえたなら良かった」。逆風にさらされた今季。それでも声援を送ってくれたファンへ、感謝を込めた一曲だった。

 「今シーズンはあっという間だった。今までの野球人生で一番短かったと思います」

 5年連続の開幕投手を務めながら開幕3連敗。4月16日に出場選手登録を抹消された。統一球導入2年目。右肘を痛めていた昨年と比べて、状態は万全だった。2度目の沢村賞獲得とV奪回を目指し気合も十分。制球を磨くため、キャンプで1クール3回ブルペン入りするなど周到に準備して臨んだはずだった。

 「フォークとか変化球を2、3種類試したりしてたんです。フォークの時だけ投げ方を変えたりしてたんで、それでフォームが崩れたんじゃないかと思う」

 進化を求めたことが裏目に出た。一度崩れたフォームはなかなか元に戻せない。防御率7・71とどん底に落ちたエースを渡辺監督は「あまりにひどい」と突き放し、無期限の2軍降格を通告した。不振が理由で2軍落ちするのは1年目の05年以来7年ぶりだった。

 渡辺監督は振り返る。「今回は彼の野球人生にとって分岐点となる。もう一度つくり直してほしい」。心身の立て直しを厳命され、2軍の練習には参加しても実戦登板の機会は与えられなかった。練習だけの日々。試行錯誤を繰り返し、トンネルを抜けられない。

 「練習が終わってから寮で時間つぶして…。夜は予定がなければ家に帰ってずっとテレビを見てるとか、そんな感じだった」。自分と野球に向き合っても、答えが出ない苦しみ。時間だけが過ぎていく中で、涌井は指揮官から思いもよらぬ通告を受けた。

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2012年11月23日のニュース