東浜“先生” ドキドキ教育実習で及第点

[ 2012年11月21日 06:00 ]

母校・沖縄尚学で行っている教育実習で、現代社会の初授業を行う亜大・東浜

 「東浜先生」がデビュー戦で修正能力の高さを見せた。ソフトバンクからドラフト1位指名された亜大・東浜巨投手(22)が20日、母校・沖縄尚学で教育実習生として初授業に臨んだ。1限目の「現代社会」では生徒とのコミュニケーション不足を露呈したが、2限目はスムーズな授業を展開。東都大学リーグ新記録の22完封を記録したように修正能力を発揮し、担当教員でもある比嘉公也監督(31)から合格点を与えられた。

 夢はプロ野球選手になること。もうひとつは教師になることだった。東浜先生は憧れの教壇で何度も汗を拭った。目の前にいるのはたった53人の高校生。マウンドとは全くの別物だった。1限目の科目は「現代社会」。前日に深夜2時まで練り上げた授業方針など、何の意味も持たなかった。

 「壇上に立つと頭の中が真っ白になった。何を話しているのか分かりませんでした」。デビュー戦は3年生の授業で、テーマは「労働」。ところが極度の緊張で生徒に質問を投げかけられず、東浜は「板書と説明が多すぎました」と反省した。これには担当教員の比嘉監督も「最初の授業は(重圧に)完封されましたね」。そこで急きょ、2限目に予定されていた1年生の授業「政治経済」を3年生と同じ「現代社会」に変更し、「労働」の内容で再登板となった。

 ピンチで崩れず立て直せるのが、東都リーグ新記録の22完封を成し遂げた実力だ。沖縄(645円)と東京(837円)の最低賃金を比較する際には、「5時間働けばいくらになる?沖縄は600円、東京は800円で計算しよう」とあえて端数を切り捨て、「労働」のテーマに集中できる環境をつくった。言葉のキャッチボール不足の反省を踏まえ、質問形式で授業を進めると比嘉監督も「最初より、2回目の方が良くなってました」と高い修正能力を褒めた。

 これだけでは終わらない。午後5時すぎには、野球部専用グラウンドで秋季九州大会を制し、来春の甲子園出場を確実としている後輩たちを指導した。左腕エースの比嘉(2年)には「技術的なことも教えました」とドラフトで3球団が競合した技術を伝えた。

 野球部寮に泊まり込み、午前6時に起床し、部員と清掃活動も行う。「学生時代しかできないことだし、精いっぱいやりたい」と疲労よりも充実感が上回っているという。「1年でも長くプロでやるのが目標。引退後(高校生を)教えられる機会があればいい」。22歳の夢は無限に広がっている。

 【過去の実習アラカルト】

 ▼高畠導宏 72年に現役を引退し、南海、ロッテなどでコーチを歴任。02年秋に福岡県の筑紫台高校で2週間の教育実習を行い、翌03年春に同校教諭となった。野球部の監督を志していたが、04年7月に膵臓(すいぞう)がんのために死去した。

 ▼栗山英樹 90年にメニエール病を患い現役を引退。93年から母校の東京学芸大と桐朋大の非常勤講師を務め、04年から白鴎大の准教授に就任。08年に教授に昇進した。

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