V確率0%、借金7からの日本一…原監督「私も動く」異次元采配

[ 2012年11月4日 06:00 ]

<巨・日>3年ぶりの日本一に輝いた巨人・原監督は両手を広げて歓喜の胴上げ

日本シリーズ第6戦 巨人4-3日本ハム

(11月3日 東京D)
 我慢できなかった。笑顔で待つナインの輪に加わる前から巨人・原監督の目には涙がにじんだ。何度も追い込まれた苦境からはい上がっての頂点。日本シリーズ進出を決めた時の10度を上回る11度、宙に舞った。自身3度目の日本一だが、本拠地では初めて。苦しかった胸の内を初めて言葉にした。

 「長かったですね。(ポストシーズンで)あと7勝しようという目標を持って戦ってきた。全員がチームを信じ、勝つことに迷いなく戦った結果。感無量です」

 3つの逆境を乗り越えてたどり着いた頂点だ。最初は開幕直後。4月には過去に優勝の可能性が0%となる借金7を経験。だが直後の4月26日のDeNA戦(鹿児島)で1番・坂本、3番・長野の2人の打順を入れ替え、これが功を奏した。優勝決定後の4連敗を除けば、2人の配置転換後は3連敗すら1度もなし。「チームが機能しない時は、ベンチ主導で選手を動かしていく。決断、勇気がないとダメ」。短期決戦でも同じだった。

 2つ目は、中日とのCSファイナルS。アドバンテージの1勝を持ちながら、3連敗を喫した。しかし、その試合で先発3人を入れ替えると打線が復調し、第5戦では同点の9回に4人の代打を起用してサヨナラ勝ち。逆王手をかけて、崖っ縁からはい上がった。

 最大の逆境が日本シリーズだった。連勝スタートも札幌ドームで連敗。第4戦では阿部が右膝裏の違和感でベンチを外れた。だが、ここでも果敢に動いた。第5戦で約2カ月も試合出場がなかったエドガーをベンチ入りさせ即先発起用。阿部の代役にはシリーズ初出場となる加藤を使った。2人が阿部の穴を埋め王手。「異次元の戦い」と位置づけた日本シリーズの流れを引き寄せた。

 守るのではなく、動く。ラミレス(現DeNA)という主砲が去った今季、原監督はチームを「ニュージェネレーション」と位置づけた。昨オフ「躍動」というスローガンを決めた時に覚悟を決めた。未完成のチームだからこそ「私も動く」と関係者に語っていた。

 大将としての優しさが日本一につながった。10月27日の第1戦。試合直前にベンチ裏で阿部を呼び止め、あるものを差し出した。決戦前に球団関係者に本塁付近を清めさせたお神酒。知人から送られた大事な一品だった。「監督から頂きました。ミットやスパイク、バットにも全部、吹きかけた」と阿部。7回の決勝打は、指揮官の思いが届いた結果だった。

 「どんなチーム状況でも自分を疑わずにチームを最優先に、堂々と戦ってくれた姿は未来永劫(えいごう)、歴史に残る選手たちだと思う。選手起用についてはいろいろな選手を起用した。選手は苦労したと思う」。目標に到達した指揮官はナインにわびた。「チームはまだ途上。日本一になりましたけど、来年も楽しみなチームです」。手応えと誇らしさを胸に、いたずらっぽく笑ってみせた。

 ▼巨人・長嶋茂雄終身名誉監督 ペナントレース同様、選手層の厚さが決め手になった。原監督の的確な判断力、結果を恐れぬ決断力は絶賛に値する。チームはまだ若く発展途上。もっと強くなる可能性を秘めている。

 ▼ソフトバンク・王貞治球団会長(巨人OB会長)ファンも待ち望んだ2009年以来の日本一、おめでとうございます。戦力的に大差のない中、ジャイアンツは選手の持ち味を生かした勝利でした。6戦まで力の限り戦った両軍の監督、選手に敬意を表します。

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2012年11月4日のニュース